2018年2月3日土曜日

アイゼン考

新しく書き直したのでこちらを見てください

軽アイゼンの選び方(2020年版)
https://yamatabinokiroku.blogspot.com/2020/05/2020.html

(2020/5/8)
















冬山の必需品、アイゼンについて私の理解を整理しておく
冬の登山の為に初めてアイゼンを買うような人(つまりかつての私だ)の参考になればと思う
10本爪以上が必要な方は……他をあたってください

実は本格アイゼンについての解説は多いが、軽アイゼンやチェーンについてのまとまった詳しい解説は少ないように感じているので
この記事でそのへんを伝えたい

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★12本爪
(画像はモンベルのカジタックス、LXT-12)
特徴:靴全体を乗せる、前爪が大きく前に飛び出している
用途:アイスクライミングまで含めた本格冬山用
長所:オールマイティ
短所:でかくて重い、歩き方が不慣れだと前爪でスボンの裾を切り裂いてしまう



★10本爪
(画像はモンベルのスノースパイク10)
特徴:靴全体を乗せる、前爪が小さめのものもある
用途:12本とほぼ変わらない本格冬山用のもあるが、前爪が小さめのものはアイスクライミングをやらない人用
長所:氷壁以外はオールマイティ
短所:ややでかくて重い



★6本爪(軽アイゼン)
(画像はモンベルのスノースパイク6)
特徴:靴裏6割位をカバーする
用途:低山向け、丹沢(1500m級)位までは一般ルートならばこれで充分
長所:冬の低山一般ルート歩きならばわりと万能、歩きやすい
短所:かかとの先とつま先は使えないので、ピッケルも使うような場面では力不足。また使うかどうか分からないが、一応念のために持っていくような残雪期の「お守り」にしてはでかくて重い



★4本爪(軽アイゼン)
(画像はマウンテンダックスのHG121)
特徴:靴裏の土踏まずの部分のみカバーする
用途:冬の低山でも初級者向けコース用
長所:小さくて軽いので装着していても、使わずに荷物でも苦にならない。爪を刺す深さの雪さえあれば普段の足裏感覚に近い歩き方ができる。あと値段も安い。
短所:土踏まずの爪をしっかり刺す必要がある。当然つま先やかかとを使うとあっさり滑る。その為使用する際のコツは6本爪よりも難しい。
また固定するバンドもゴム式だったりで簡易なため、足を平らに置けない場面では危険(外れる可能性がある)



★チェーン
(画像はモンベルのチェーンスパイク)
特徴:ゴムバンドで靴にかける、靴裏をほぼ全体チェーンでカバーする
用途:冬の低山でも初級者向けコース用
長所:小さくて軽いので装着していても、使わずに荷物でも苦にならない。
4本爪や6本爪と違ってつま先からかかとまでほぼ全体をカバーしているうえ、爪が飛び出ていないので歩き方にコツがいらない
短所:ゴムバンドで引っ掛けているだけなので外れやすい。急斜面に斜めに足を置くような場面では使っていはいけない。
また雪の状態によってはチェーンがあっというまに雪玉(氷玉)をまとって重くなってしまう。



★スパイク長靴
(画像はミツウマの岩礁100NS)
靴裏全体が剣山のようにトゲだらけのゴム長靴
元は濡れた岩礁で滑らないためのものなのだが、登山道が未整備の荒れた山を歩くための山林用もある
逆に整備された登山道では道を傷めるので使ってはいけない(特に金属トゲのやつは)
ただ高尾山のような低山でも、雪の降った直後などはスパイク長靴の特徴的な足跡を見かけるのだ
私自身使ったこともないし、周囲に使った人もいないため、コメントは出来ない
ただゴム長靴特有の、中で隙間が出来るようなことがなく、足と靴とをしっかり固定できるならば存外に使いやすいのではないかと思う
私自身のクセなのだが、登山用のブランドよりも、山林で仕事をする人が使っているものの方に惹かれるのだ


★簡易式すべり止め
(画像はキャプテンスタッグの滑らんぞーハードL)
靴に引っ掛けるタイプで、靴裏の一部に短いスパイクを作るもの
基本的に降雪後の凍結した街なかで歩くためのもので、山で使うには色々と力不足
それでも林道や緩やかな山道で凍結している場合、他に何も無いよりはマシかな?程度


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以上を踏まえて初心者が何を買うべきか、私の意見を述べる

最初の一つ目はチェーンが良い
軽アイゼンに代わり、近年急速に普及して種類も増えてきているのにはそれなりの理由がある
以前は「あんなもの、山で使うものではない」という意見も少なくなかったのだが、モンベルも扱うようになって払拭された感がある

軽アイゼンのように歩き方にコツがいらないし、雪のない場所でも爪がジャマにならない
軽量コンパクトで値段も6本爪よりかは少し安い
標高の低い山ではあまり雪が積もらないし、積もってもすぐに溶ける
雪の残っている所と、まだ残っている日影とが混在しているような山に特に向いている
山慣れた人ならばそういう時はアイゼン自体使わないのだろうが、
そういう山だからこそ、北側斜面などは日中に緩み・夜間に再凍結を繰り返してつるつるだったりするのだ
これは高い山にはない低山特有のいやらしさであり、初心者を悩ませる
そういう所で威力を発揮するのだ

一方でチェーンの限界も知っておいて欲しい
これは滑り止めであってカチカチに凍結した斜面に爪を食い込ませて体を保持することは出来ない
なによりゴムバンドをひっかけるだけなので、急斜面に斜めに足を置くと体重に耐えられず切れたり・靴から外れてしまう危険性を感じる

そういう山に行くようになったらば、次に買うべきは6本爪だ
斜面の圧雪・凍結でも安定して登り降りできる
実際、冬の低山でもっとも使われているのが6本爪だろう
各所のビジターセンターなども、まとまった雪が降った後などは6本爪を持ってくるように呼びかけることが多い
なので、最初にこれを買っても良い
ただチェーンよりかは歩き方にコツがいり、雪のない場所では途端に歩きにくくなる(つけたり外したりもチェーンより面倒だ)ので本当の初心者にはチェーンで雪道に慣れて欲しい
また「たぶんもう雪はないだろうが、それでももし残っている場所があるといけないのでお守りとして持っていく」にしては大きくて重いので、両方持っていても使い分ける事になる

6本爪でも力不足、つまりつま先とかかとにも爪が必要な山を歩くようになったらば……
それはつまりストックでは力不足でピッケルが必要になるということでもあるのだが、そうなったらば10本・12本のアイゼンになる
それについては私ではコメント出来ない(特価品の10本を買ったはいいが使ったことが無いような奴だ)ので他をあたってほしい


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(2/4追記)
先週と今週とで久しぶりに軽アイゼンを使った
4本爪と6本爪、両方使ってみて……昔よりも多少は山に慣れた今、微妙に考えの変わった所もある
2点書き足しておく


・6本爪に死角はないのか?
「低山の一般ルートではわりと万能」という評価は今も変わらない
第一家を出る前に山の雪の状態は分からないのだから、6本がいいか、チェーンがいいかなど判断出来ない
かといって全部持っていて現場で適切なものを使うなど馬鹿らしい
大は小を兼ねるで6本爪を持っていくのももっともな話

とはいえ、雪のない場所で爪が邪魔だなあと感じるのも本日再確認した
あとこれは私の持っている「モンベルのスノースパイク6」が、6本爪の中でもやや小ぶりなこととも関係あるかもしれないが、急斜面をずっと登っている・下っていると、位置がずれてくる
それにともなってバンドが軽登山靴の上からでも変な圧迫感があったりもする
ちゃんと公式の締め方で、しっかり締めているのだけどなあ
バンドの締め方を独自に工夫することで対処可能だろうか?


・4本爪はダメなのか?
山の装備は高価だ、特にちゃんとしたブランドのものは
チェーンや6本爪に比べて、4本爪の値段が魅力的に感じる向きもあるかと思う
実は私もそうで、最初に買ったのが上にもあげたマウンテンダックスの4本爪だった
だがどうにも使いにくさを覚えて、当時はまだ普及していなかったRUDのチェーンに変えてみたのだった
そしたらとても使いやすくて
それは当時の私が登る程度の山がチェーン向きだったのだろう
ともかくそれで一度手放してしまった

6本爪とくらべて軽いのはもちろん、バンドの締め付けが嫌な感じがなく、アイゼンがずれることも少ない
足の甲から土踏まずにかけてバンドかけすることのメリットだろう
(ただしこれは補助的にかかとにも掛けるタイプの話、本当に足の甲だけに掛ける簡易式は使ったことがないのでコメントできない)

6本爪より歩き方にコツがいるのは確かだが
土踏まずの爪をしっかりと雪に刺して制動を効かせる歩き方というのは、雪上で滑らないための足運び・フラットフィッティングと実はほぼイコールなのだ
なのでアイゼンに頼らずとも雪上を歩ける人ならば、4本爪をつけていても苦にならないだろう
土踏まずの爪で制動を効かせつつも、それ以外の靴裏はいつもと同じ足裏感覚・それでいてバンドの窮屈さも少ないとなれば、これを積極的に使いたいという考えも分かる
(やはりそれでも急斜面ではダメだが)

雪のない所で爪が邪魔になるのは6本爪と同様だが
そもそも雪上歩行になれた人なら、そういう場面ではアイゼンなどつけずにスタスタ歩くものなのだ

結論としては4本爪はダメじゃなく、独自の使い勝手がある。ただし慣れた人向け、といった所か


と、ここまで考えをまとめて初めて思い至ったのだが
4本爪の中でも足の甲だけで留める簡易式、
こういうやつね(画像はモンベルのスノースパイクシングルフィット)
なんとも頼りなく感じて私はこれまで一考だにしていなかったが
これは道の状態次第でこまめに着けたり外したりするためのものなんだな


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