2021年7月24日土曜日

2021/7/22木~23金 思い残しを片付けに@富士山

オリンピックのおかげで4連休。
テントを担いでアルプスか八ヶ岳に行きたい。
だがどうにも天気予報が怪しい。
ギリギリまで判断を保留していたが、どうも土曜日の長野山梨はかなり悪そうだ。
だが金曜日の山梨は良さそう。
むしろ木金に限っていえばかなり良い天気のようだ。
それならば……行くか、富士山。

このブログで言ったかどうかは覚えていないが。
富士山には何度も登っているが、日本最高所の剣ヶ峰やお鉢まわりはまだやっていないのだ。
毎度毎度登る前はそれをやろうと思っているのだが、いざ頂上までつくと疲れてしまってその気が無くなるのと。
富士山という登山対象としてはなんとも微妙な山の特性を思うに、それをやってしまうともう満足して再び来ることが無くなりそうな気がしてしまって。
それでいつも「次来た時にとっておこう」と謎の心理が働く。

だが。
集中豪雨による登山道の閉鎖・コロナ禍による配慮・私自身の年齢。
もろもろ考えて、そろそろ片づけておこうかな、と。
幸い前日でも高速バスの席はとれた。


前日の夜に荷物を準備
富士山に登る装備じゃないが、これはまあ後述する。
水3Lを含めて13kg。
財布携帯などの身の回りの貴重品や、朝にコンビニで買う食料を含めれば14kgか。


出発がバスタ新宿なのは旅情があっていい。


0645のバスにのる。
その一つ前、尾瀬行のバスもあるのか。
尾瀬か……それもいいなあ。


4連休の初日という事もあってか。
中央道の下りはいきなり大渋滞。
三鷹のあたりでもう渋滞につかまって、小仏トンネルまで30km渋滞とか。
うへえ、まいったな。
上野原に入ったあたりでようやく尋常に走れたけれど。
あまりに長時間になったもので「法令により臨終休憩をいれます」とのこと。
谷村PAで30分休憩。


谷村は小さなPAだった。
満載のバス4台が停まって乗客を吐き出したものだから、食堂も売店も大賑わい。


河口湖のあたりからみた富士は雲の中。
富士山五合目行のバスは4号車まで出る増発体制だったが。
私の乗る2号車は半分くらい富士急廃ラインドで降りて行った。
開園前の富士急に安く行ける高速バスは人気で、新宿からの河口湖路線バスをドル箱足らしめている要素の一つだけど。
富士五湖線に空きが無ければ富士山行のバスの席を取る人が予想以上に多いのだな。
増発すべきは河口湖までのバスのような気もするが。


新宿から4時間50分もかかって、ようやくスバルライン5合目。
既に疲れた。
それなりに人はいるものの、コロナ禍以前とは比べ物にならない少なさ。
特にスバルライン五合目は、他のルートの五合目と違って、山に登らない観光客が多いのが特徴で。
大陸からの観光客でかつてはにぎわっていたのだけど。


富士急雲上閣でお昼。
この後向かいの五合圏レストハウスでラーメンも食べた。
急いではいないのだ。
本当はもっと遅い時間のバスでも良かったのだが、朝一のバスしか空きが無かったので。


1000円のキーホルダーを買う。


虚無の中を行く。


吉田(須走)ルートを行く間は、親の顔より見ることになる山中湖。



六合目。
人、少なすぎ。
シーズン中の好転の祝日でこんなに人が居ないとは。
ここまで歩いてて気づいたけど、ツアーの団体さんがいないんだ。

でも昨夜に吉田ルートの山小屋の予約状況を見た感じ、本八合目のトモエ館より上は予約でいっぱいだった。
(コロナ以前なら七合目の花小屋まで一杯で、開いているのは佐藤小屋と星観荘くらいのものだった)
この状況でも予約が埋まるのだから、各小屋とも宿泊者数をだいぶ絞っているのだろうな。


六合目からしばらく砂礫のジグザグ道だが。
花小屋の手前から岩場が始まる。
そして渋滞。
なんで??

岩場っていったって、危険なはしごや鎖場があるわけでもないのに。
コロナ以前でもっと人の多かった頃でもこんなにも遅々として進まない渋滞はなかったはずだが。

しばらくして理由が分かった。
疲れてふらふらになって歩いている人がいて、その後ろに渋滞が形成されてるのだった。
それなのにリーダーらしき人が脇にどけて休ませずに歩かせ続けている。
迷惑だなあ。


本七合目の東洋館でようやく渋滞原因を追い越せた。


本七合目から八合目間はしばらく小屋のない岩場が続く。
道も広くなり、また疲れが出てくるころで、脇に座って休む人も出てくる。
私も腰をおろしておにぎりやパンを食べる。


城に攻め入っているような気分になる。


本八合目のトモエ館と上江戸屋を過ぎると、もう歩いている人もほぼいなくなる。
気温も下がってきた。
ジャージの上下を着込み、手袋をつける。


上を見上げれば九合目の鳥居と頂上がもう見えている。
時間も遅くなり、この時間に歩いている人ともなれば、富士登山者ではなく「登山者」としての同族意識がでてくるのか、短い会話を交わすこともある。



九合目を通過。
つらい。
脚が思う様に動かない。
スバルライン五合目~吉田ルート頂上は、おおよそ標高差1500mだが。
低山の1500mとはまるで違う。
たとえば鴨沢~雲取山なら同じ14kgの荷物でもこんなにくたびれはしない。
砂と軽石の混じった柔らかい足場と、気圧が低くて酸素の薄い標高がダブルで体力を奪いにくる。
低山なら2000mか、それ以上に相当するんじゃないかな。




ついた。吉田ルート頂上。


スバルライン五合目から6時間弱かかってしまった。


自販機がある。あったか~いもあるぞ。


あつあつだ。
ありがてえ。神様仏様、いや木花咲耶姫様か。
外人さんもオーマイガ言いながらコーヒー買って行った。


火口を挟んで剣ヶ峰。
私と同類の、多分頂上で夜明かし知るつもりの人もちらほら。


吉田ルートと御殿場ルートの間くらいの、目につかない所で夜明かしの場所を見つけた。
座るのにちょうどいい岩と、横になって休むのに適当な場所があった。


日が暮れて都心方向の灯りが届き始める。


麓の富士吉田市


御殿場方向とやけに明るい月。
月が明るすぎて星空が良く見えないほどだ。

いい酒を500mlボトルめいっぱいに詰めてきたので、月見酒と行きたいところだけど。
疲れすぎたせいかな、意外と食欲がない。
酒を飲んでも妙にきつく感じてあまり飲めない。


あまり酒ものめず、疲れてきたので横になる。
フォームマットを広げ、寝袋(スナグパグの快適7℃)とシェラフカバー(SOLのエマージェンシービビィ)
富士山の標高でも夜露は降りるようで、寝入るときにはツェルトをかぶった。
テントの許されない富士山ではこれがギリギリだろう。


雲隠れにし夜半の月、それと剣ヶ峰。
20~24時ごろは全く人が通らなかったのだが、0時を過ぎるとぽつぽつ人が通る。
弾丸登山で頂上についた人が、そのままお鉢めぐりをしているのだろうか。

置いておいたザックに霜が降りていたが、顔にひりつくような冷気はない。
たぶん気温は0℃以上だったと思う。


四時に起きて寝床を片付ける。
ご来光を迎えるのによい、吉田須走下山口あたりに移動する。


下をみえれば、頂上目指して登ってくる人のヘッドライトの列が。


明るくなってきた。


多くの人が同じ方向をむいて、同じものをじっと見つめている。


今日の日の出は6:42。
だが雲がおおい。


6:42。時間です。


まあよいのです。充分に満ち足りた。


朝日に温まりつつ、朝食をたべる。
帰りのバスは12:30のを買ってあるが。
10:30でも良かったかな。
だいぶゆっくりだ。
ザックをデポしてお鉢めぐりに。
富士宮ルート頂上と剣ヶ峰。


南側は雲が湧きたって、駿河湾はみえず。


剣ヶ峰の手前の馬の背と呼ばれる斜面。
ぱっと見それほどでもないゆるい坂道なのだが、砂ざれで滑りやすい。
降りる人は転ばないように慎重におりてきている。


日本で一番高い場所。
ようやく来ることができた。



剣ヶ峰から先へ。
正面に見える白山岳は標高3756m
だがこれが一つの山として扱われることはない。
じつは「山」には明確な定義はなく、国土地理院もあえて定義しない方針だ。
白山岳が「山」ならば。日本で二番目に高いのはここになるが、そうはなっていない。
北岳と間ノ岳は別の山として扱われるのに、ここがそうでない明確な理由があるだろうか。


西側
大沢崩れの荒々しい斜面と影富士


白山岳の南側、お鉢めぐりで一番低いあたり。


吉田ルート頂上を目指してのぼる。


振り返れば八ヶ岳(ヤツ)がいる。


吉田ルート頂上へ戻ってきた。
下山口にデポしておいたザックを回収し、残った酒と食料を片付ける。
7:20下山開始。

さて。富士山の下りは時間が読みにくい。
なんとも無ければコースタイムより大分早くおりられるが、膝を痛めてしまうとずっとかかる。
案内によっては砂走りなどを「軽快に飛ばせる」などと記述しているけど、それは脚力と膝の万全な人の話で。
膝を痛めて横向けや後ろ向きにソロソロ降りる人はいる。
ブル道の折り返し場所でくたばっている人は登り以上に多い。
もとより登山は登りより下りの方が難しく、膝に爆弾を抱えてるともなればなおさら。
富士山の下りは歩き方の総合力を試される。

歩き方のできている人は、さほど砂ぼこりを巻き上げずに降りていくよ。


スバルライン五合目に戻り、身体をふいて着替えた。
シャワーはどこもやっていないようだ。
有料でいいから更衣室が欲しいな。


こけもものソフト。うまい。
このあと座布団をだして壁に寄りかかってバスまでの時間を待った。

富士山の頂上を臥所とし、月明かりの星空を天蓋として眠るのは、とても楽しい経験だった。
これほど天候に恵まれたからこそできたのであって、良い子はマネしてはいけませんよ。