2016年10月31日月曜日

2016/10/30日 御中道

2016/10/30日 御中道(途中撤退)

0745 バスタ新宿発
1010 富士山五合目 2700円

1500 富士山五合目
1725 バスタ新宿 2700円

スバルライン五合目(2305m)~大沢崩れ(2200m)
地図上のコースタイム
行き2:20/帰り2:25

1020に出発し、1450には戻っているとしても4:30しかない
たぶん大沢崩れまでは行けない
1230になったらその場で引き返す事とする

ただし高速バスに間に合わなくても、最悪スバルライン五合目から河口湖に下りる路線バスはある
1550と1620の2便が利用可、1540円




==============================
富士山に登るのがまだ富士講などの信仰登山だった時代
頂上へ三回登った者にだけ許される御中道と呼ばれる登山があった
およそ五合目~六合目くらいの標高を、ほぼ水平にぐるりと一周する
水平移動ならば、時間はかかるにしても山頂に登るより楽ではないか?と、愚かにも思わないでもなかったのだが……


この御中道だが、現在はほぼ失われている
北のスバルライン五合目から吉田口までは車両も通れる道になっていて、
吉田口から南の富士宮五合目までは、道があったりなかったり
富士宮五合目から西の大沢崩れまでは1977年に廃道になっている
40年も経てばもう道は自然に飲まれているだろう
御中道が歩かれなくなった理由は不明だが、間違いない理由の一つとして西側の大沢崩れと呼ばれる巨大な崩落地によって通行が不可能になった事があるだろう
深さ15mはあるという崖で、今もなお毎日大量の土砂や岩が崩落し続けている危険地帯なのだ

そんな御中道だが、例外的に北のスバルライン五合目から西の大沢崩れまでの1/4は比較的往時のままに歩けるらしい
そのうち行ってみようと思っていて、今年のGWの時に行ってみた……のだが閉鎖されていたなんて事もあったな



スバルライン五合目までは新宿からの直行の高速バスがとても便利
とはいえこのバス、夏山シーズンが終わると11月第一週までの土日運行のみになる
行きは午前2便、帰りは午後2便のみ
早い方の便で行って、遅い方の便で帰るにしても、滞在時間は短い
上記の計画に書いてあるように、終点の大沢崩れまではちょっと行けそうにない
それでも行けるところまで行って、時間切れになったらそこで引き返せばよいという考え


中央道を走るバスの車窓から
都留市を過ぎて西桂町のあたり
本日の降水確率は6-12時が20%で、12-18時が10%
雨の心配は小さいはずだが、ご覧の天気でどうにも不安


珍しく富士山三合目で降りていく人がいた
運転手も「ここで大丈夫ですか?」と心配している

スバルラインが開通して車道が通っているものの、スバルラインの三合目・五合目というのはかつての精進湖口の三合目・五合目だった場所で、登山ルートもまだ残っている
もっとも歩く人がどの程度居るのかは怪しいが
精進湖の場所が登山の起点として不便なのもあるし、樹海の中の歩きが長過ぎるのだ

ともあれ今日に紅葉狩りするには一合目~三合目あたりがベストな感じだ





定刻より5分早くスバルライン五合目に到着
さささ寒い!
慌ててウィンドブレーカーを羽織る
いつもそうだがここは中国人観光客でいっぱいだ
なぜこんなにも中国人に人気なのか


先日富士山初冠雪のニュースをやっていたが、その時の映像よりも雪がついている


西側は雲が立って、南アルプスは見えず


 山頂から吹き下ろす風が冷たいのか、お馬さんも壁ぎわに寄ってて寒そう


時間が惜しいので早々に出発
前を高齢者グループが行くので、おや?と思ったが
管理事務所の人に植物の案内をしてもらっているだけだった








荒涼とした富士の晩秋だが、風の冷たさは真冬の低山なみ
体が温まってきたら脱ごうと思っていたウィンドブレーカーが脱げない
透湿性のない素材なので、ずっと着ていると汗で中が濡れてしまうのだが


御庭の休憩所
あまりに早く着いたので、このときはここが御庭だと思わずにもっと先だと考えていた


 広かった道が急にか細くなり、思わず「え?ここ?」


右手をみると、なんだ広い道があるじゃない
こっちを行こう
しかし道がやや下りだして、おかしいなと思い


GPSで確認してみると、これ道が違うな
今ならまだ間に合うとばかりに左手の山肌を登ってしまう


で、本来の御中道に復帰




雨が降っているわけではないのだが
雨雲同然の湿った雲が山肌を撫でていくために木の枝が水を蓄えていて
それが風が吹くたびにパラパラと水滴を落とす
その為小雨の中を歩いているのと変わらない



西面の開けた場所に出る
晴れていれば西に富士宮・身延が見下ろせただろう

人の話し声が聞こえたような気がした
幻聴かと思ったのだが
ここから少し進むと確かにグループがいた
先行パーティがいて、追いついたのだ


そのグループが休んでいるのかと思いきや
深くえぐり取られたかのようなこの谷のために直進出来ないのだ


滑沢だ
しかし地図では直進出来るような塩梅なのだが



谷の深さは5~6m位あり、垂直に近い崖はとても降りられない
いや、降りれたとしても対岸が登れない
国土地理院の地形図でも登山ルート有りだし
昭文社の山と高原地図(2012年版だが)でも一般登山ルートとなっている
だが崩落が進んで道がなくなってしまったのか


仕方ないので高巻きに渡れるところを求めて、山頂へ向かって砂礫の斜面を直登していく
先行のパーティはとても歩くのが遅く(私もたいがい遅いのだが)、先に行くようにと道を譲られてしまう
まいったなあ、正直ここで引き返す事もチラと考えていたのだが(この時11:50頃)

追い抜いていくと、パーティの先頭はなんとプロの山岳ガイドだった
「この先歩いた経験はあるのか?」
と聞かれたので正直に無いと答える
滑沢の崩落が進んで道がなくなってしまったこと
この渡った先の樹林帯がわかりにくく、行方不明者も出ていること
ついでに「そこを下りるんですよ」とも教えてくれる
なんだか後には引けなくなってしまったぞ

地図もGPSもあるので、道迷いの心配は無いが……
本音は後ろについて行きたかったのだが、プロのガイドが率いるパーティとなるとそうもいかないよな

ともあれ行くしか無い
崖を降り、対岸の砂の急斜面を登る
普通に足を乗せると崩れてしまうので、両手もついて体重を分散し、つま先を思いっきり蹴り込んだキックステップ&よつんばいでなんとか登る


 対岸を登ると、踏み跡のまったくない森の中
所どころリボンが枝については見えるのだが、正直それが登山ルートの目印なのか判然としない
ともかくあまり高低方向への昇り降りは避けて、水平方向に南に行くよう、比較的獣道っぽい所を探して進む


しばし森の中をさまよううと、次の沢の手前にでる
仏石流しという場所か
先の滑沢ほどではないが、ここも崩落が進んでいるようだ
立ち尽くして眺めていると、私が森から出てきた所よりも20mくらい下から例のパーティが森から出てきた
そっちに道があったのか


道のない森のなかで悪戦苦闘してすっかり服も汚れてしまった
時間を見ると12時をだいぶ回っている
ここまでだな、と判断
そのパーティに「私はここでご飯食べて引き返す」と声をかける
別に伝える義理もないのだが、
「あの単独男性、あのあと見かけないが遭難してないか?」
などといらぬ心配掛けるのも心外なので

おにぎりを食べていても冷たい風で指がかじかんでしまう
一つだけ食べて、退散する


森の中に戻る
もう来た道が分からん


滑沢の方に近づいてくると、踏み跡のしっかりした道が見える
これが本来の御中道の道だった所だな、と飛び出してみたが


ここは崖が急で降りられないし、対岸も登れない
そうだったな
もっと上の方でないとダメだ


いったん森のなかに戻る
だが今度は進むべき方向が見当ついている
してみると意味不明だったリボンも、つけた人の意図が見えてくる


 赤いリボンの所で上下移動して、白いリボンの所で水平移動しろ、と言う事かな?
(でも無関係なリボンもあるんだよなあ)


もう一度滑沢に出る
今度は谷底に降りられる


谷底を山頂側へ進む
なるほど、降りてすぐに私は対岸を無理やり登ってしまったが、
谷底を少し歩けば離れた場所に登りやすいところがあったのか
ともあれこれは、確かにガイドなしでは厳しいな
一般登山道と呼べる状況ではない
私は地形図やGPSを持っていたが、それがなかったら道迷い遭難の危険があるぞ


滑沢の北側に戻ってきた
いやはや、大変だった


振り返って見る山頂の銀世界が、こころなしか少し険しく思えた


40分ほどで御庭のあたりまで戻ってくる
富士山は西側の方が森林限界が高いのだな


御庭のベンチで残ったおにぎりをたいらげる


北側は雲海
御坂がちょこっとだけ頭をだしている
……うん?御坂じゃなくてあれは奥秩父かな?


黄葉ばかりで、紅葉の枝はもう全部落ちてしまったかと思ったが
鮮やかな枝も多少は残っていた


雲海の上に南アルプスも顔を見せてくれた


14時頃、スバルライン5合目に戻ってくる


身支度をしてもまだ時間があるので
雲上閣の二階で外を眺めながら一杯
食堂では石油ストーブが焚かれている
案の定ウィンドブレイカーの中の服は汗で濡れてしまっていたのでありがたい
ちゃんとしたウィンドシェルも買おうかな?ゴアテックスとまで言わないけど、透湿素材のものを
エントラントのカッパは持っているけど、カッパはあくまでカッパなので、気軽な日帰りハイクで羽織るにはゴツすぎる


高速バスは全席完売のはずだったが
なぜか行きも帰りも私の隣は空いていた
まだ夕方前なのに小仏トンネルで渋滞15kmと聞き、そうか週末だったかと思い返す
新宿には1時間遅れで到着


今回はもとより途中で引き返すことになると織り込み済みで来たのだが
想定していた場所よりも手前で引き返す事になってしまった
なんというか、富士山を舐めていたなと反省しきり
車で五合目まできて、ブルトーザーが行き交う、ガチガチに整備された道で山頂へ登る
そんな上っ面しか見ていなかったな、と
確かに3回登頂するくらいの体力は必要なんだろう



追記:
以前にみた、御中道のガイドのHPを再確認してみると過去の写真(2011年)では滑沢も仏石流しもえぐれていない、なんてことの無い山肌だった
ここ数年であんなことになったのだろう

また調べると現在でも御中道を一周する猛者は居るらしい
・富士宮五合目から大沢崩れまでの、廃道になってルートのわかりにくい樹林帯の中
・大沢崩れを沢沿いに400mも下って、工事現場のハシゴを借りて対岸に渡って登り返す部分
・須走口から御殿場口までの道が無い・目標物も何もない砂礫の開けた斜面
が特に難所らしい



参考リンク:

富士山「御中道」トレッキングコース情報
http://www.camp-outdoor.com/tozan/fujisan/ochudo.shtml
ここの写真では滑沢も仏石流しもなんてことのない場所
写真にある石の標識は存在しなかった
流されてしまったのだろう

山梨県のHPの観光情報
http://www.pref.yamanashi.jp/fujisan/fujisanocyuudou.html
ここによれば県として管理している登山道はスバルライン五合目から御庭までの間だけで、
御庭から大沢崩れは管理対象外となっている




さらに追記:
滑沢の渡り方

北から南へ
1.途中道の道を北から来ると、滑沢が深くえぐれていて渡ることが出来ない。対岸に白いリボンが見えるが、それは無視
2.滑沢の北側を山頂に向かって登る
3.地面に突き立てた枝に、赤いリボンがつけてある箇所で、滑沢の谷底に下りる
4.谷底を下に10mくらい進む
5.滑沢の南側に赤いリボンが見える箇所を登る
6.南側に登って森のなかに入ると、白いリボンが見えるので、水平方向に進む。リボンは2箇所ある
7.その先に赤いリボンが出たら、今度は垂直方向にくだる
8.10mほどくだると次の赤いリボンがある、そこから滑沢へ出るようにすすめば赤いリボンがあり、本来の御中道の道に出る

踏み跡はほぼない
が、上記のルートはわずかに枝も倒木も少なく、おおよその進むべき方向が分かっていればリボンは探しやすいはずだ
あくまで2016年10月30日時点での情報なので、その点だけ留意してほしい
以前の違うルートで渡っていた時のリボン?と思しきものもあるので、それも気をつけて欲しい