2019年3月24日日曜日

2019/3/23土~24日 さよなら奥多摩小屋

最近山に行くゆとりはあまりないのだが。
それでも天気の良いこの週末にはなんとしても行きたいところがある。
このブログでも何度か触れてきたが、奥多摩町営の雲取奥多摩小屋がこの3月で閉鎖・取り壊しとなってしまう。
それに伴ってトイレ・テント場も閉鎖になる。
最後のお別れに行っておきたいのだ。




予定としてはいつもの。
ホリデー快速1号で行き、8:35の丹波行のバスで鴨沢から。
下山ルートは後で考える。
唐松谷林道や富田新道もいつかは歩いてみたいが、いかんせん日原から遠い。



 荷物を準備。
一度ツェルトを選択肢かけて、「いやいや3月の1800mでツェルトはまだ無理だろ」とテントを選び直す。
寝袋やダウンジャケットなどが高性能ならばツェルトでも行けるかもしれないが、そんな高価な装備は持ち合わせていない。



 新宿でホリデー快速1号に発車間際に飛び乗ると、座席はもうわずかしか空いていなくてギリギリ座れたありさま。
暖かくなって行楽客も増えてきた。



 鴨沢は小雨の中。
降水確率は10%だったはずだが。
駐在さんが「奥多摩小屋の水場は細くなっているので、七ツ石で水を汲んでいくように」と声をかけていた。
トイレをすませ、温かい缶コーヒーを飲む。



 9:17出発



 小雨だったのが強まってくる。
カッパを着たものかどうか迷うが、ひとまず着ないままで行く。
気温が高いのですぐに中が蒸れてしまいそうだ。



 小袖の登山口。特にかわりなく。



 堂所手前の水場で1Lだけ水を汲み、休憩する。
冬でもまず枯れることのない信頼性の高い水場だが、こんなに細くなっている。



 堂所をすぎると小雨はみぞれ混じりに



 完全に雲の中だ。



 マムシ岩のところで観念して上を羽織る。



 給水の為七ツ石小屋を経由する。
が、疲れた。雪が薄くつもった切り株に腰を降ろして休む。
今日は荷物が重いのもある。
鴨沢ルートはなだらかで急なところがなく歩きやすい。
それでいて腰をおろすのにちょうどいい場所が少なく、ついつい休憩しそびれてしまう。
いつもならマムシ岩のところで休むのだけど、上を羽織るのでバタバタしてたから。



 七ツ石小屋前でも腰を降ろして休憩。
だめだ、脚に疲労がたまりだしている。雪が強くなってきているが、ちゃんと休まないとだめだ。



 七ツ石小屋上の水場
ここもまず枯れることのない水場




 いつもより細くなっているものの、それなりにちょぼちょぼと出ている。



 七ツ石南面の巻道に入ると、西側の道がカリカリに凍結している。
日中に緩んだ雪が、夜間に再凍結を繰り返しているような固い凍結だ。
ほぼ平らなので、何もつけずとも歩けることは歩ける。



 ブナ坂十字路に出る。
せっかくなので、アレを試しておこう。



 昨年の秋口に買っておいた新しいやつ。
カンプのアイスマスター……の、パチモノ
YUAGEという以前買った10本爪のメーカーのもの。
10本爪のもひどい粗悪品ではなかったので、これもまあ大丈夫だろう。

メイドインチャイナなのは本家のカンプも同じだし、
肝心の底のプレート部は詳細に至るまで一緒なので、おそらく同じ金型だと思う。
耐久性はともかく、使い勝手の参考にはなるだろうと。

今になって気づいたが、YUAGEの10本爪もモンベルのスノースパイク10のパチモノだな。



装着するとこんな感じ。
チェーンの自由さがありながら、10本爪に近いグリップ感が得られると。
前側のプレートは蝶番になっていて、靴のしなりを妨げないようになっている。
評判がいいのもうなずける。

チェーンの類いを使うのは久しぶりだけど、歩いてみると確かにアイゼンとは違った楽さに納得させられる。
つま先からかかとまで何らかの滑り止めが働いていて、それでいて靴の曲がるのを一切妨げない。
靴と地面との間の違和感も小さく、歩きかたにコツが要らない。
確かに初心者向けではある。



 調子よくあるき出したものの、圧雪箇所があったのは最初の20m位で。
50mほどあるいたものの、これはもう必要ないなと諦めて外す。
するとこんな短距離しか歩いていないのに、プレートに泥混じりの雪が分厚くへばりついているではないか。
チェーンの欠点の一つがこの、雪がくっつきやすい点。
最近のアイゼン・軽アイゼンならば雪をつきにくくするため、爪の間に弾力性のあるプレートをつけてたりするのだけど。
チェーンではそれは望めない。



 とはいえ薄雪をまとったブナ坂は美しいな



 振り返って七ツ石山



 ヘリポートをすぎるともうテントがいくつも張られていた。
小屋につくまで数えていくと、27。
この時間でこれなら、最終的には40位になるだろうか。
程よい立地と広い場所、水場が近くて眺めは最高。
テントが張れるから、テント泊市に来る人が多いという一面はあるものの、
これだけのテント泊希望者を七ツ石小屋と雲取山荘では受け入れできないだろう。

今回のこの写真をPCで整理していて気づいたが、私自身昨年からのテント泊山行はGWの上高地以外すべてこの奥多摩小屋だった。
都心から一泊で行けて、程よく登った山中のテント場となると意外と選択肢はないのだ。
あとは……
 両神山の清滝小屋(遠い)
 七ツ石小屋(狭い)
 雲取山荘(鴨沢からも三峰からもちょっと大変)
 三条の湯(林道歩きが長過ぎる&標高を稼げないので翌日の行動がきつくなる)
 丹沢の大倉高原山の家(大倉から小一時間で山中とは言い難い。この先どうなるかわからない)
 大菩薩の福ちゃん荘(シーズン中は上日川峠から近すぎる)
と、なにがしかの不満点はある。
 


 14:25。ずいぶんとかかった。
奥多摩小屋に入ると、今日は宿泊者が居るようだ。
そして小屋番さんがいない。
紙に記入して、お金と一緒に箱に入れてくれとある。



 尾根の南側は泥になっているので、テントが汚れるのを嫌って北側で設置場所を探す。
靴で地面を平らにしようとするが、5cmほどの新雪をのけるとカチコチの凍結が出てくる。
諦めて、上半身分だけでもできるだけならす。



 強風は無いと判断して、張り綱は無し。
そのかわり四隅にはソリッドステーク20cmペグをハンマーで氷に刺さるまでしっかり打ち込んでおく。
山のテント場では四隅のペグを打たずに、張り綱だけ張る人が少なくないけど、あれは良くないと思うよ。
本当に強風が来たときに、張り綱だけでは耐えられるかどうか。
四隅のペグでテントを固定し、張り綱はポールが折れないようにするための補助だと思うよ。



 設営しおえて中で一休み。
このテントとも結構長い付き合い。
安いわりに快適なテントだが、本格的な山岳用テントと比べると重い。



 晩飯
マルちゃんのインスタントそば


 半分に折れば小さなクッカーでも2食分同時に作れる。



 19時近くなり、いい加減寒くなる。
多分外はもう氷点下だろう。
寝る準備をせねば。
この冬は暖かくて、ホームセンターで買った50枚入の使い捨てカイロを全然使わなかった。
ので、8枚ほど持ってきたのだ。
まず両足の裏と甲に張る。



 それからダウンベストの背筋に2枚。
両脇に2枚。
これで薄い寝袋でもなんとか寝られる。
特に足に張ったのはいいアイディアだった。

夜中寝ていると、どうにも背中がゴツゴツしていて良くない。
テントを張る前に鳴らしたのだが、雪で持ったところは沈むのに対して、固く凍結したところは沈まないようだ。
なんとか寝返りをうってしのぐ。
エマージェンシーブランケットをフロアシート代わりに敷き、リッジレストを使っていても底冷えは伝わってくる。
こんなに寒いとは思わなかった。
ネットの天気予報をみると「季節外れの寒気」などといっている。





 翌朝。
6時少し前に目は覚めたが、あまりに寒くて寝袋から出ることあたわず。
7時過ぎに膀胱が限界になってやむなく起きる。
案の定というか、水筒の水は凍っていた。



 トイレを済ませて小屋の前に立つ。
体の芯まで凍えるような冷たい風だが、天気は上々。



 最後に奥多摩小屋をもう一度。
山でのテント泊の楽しさと厳しさをここで学んだようなものだったよ。
残念です。
そして今までありがとうございました。



 自分のテントに戻ってきて、
はて、こんな傾斜地に建てたっけ?



 なんだかんだでよく眠れたようじゃない。



 まずは水を解かさないと朝飯が作れない。
塩分は充分とれているので、紅茶とカロリーメイトの朝食にする。



 昨日からどうもガスの出が悪いなと調べると、内部のゴムパッキンがボロボロになっていた。
スノピのギガパワー地、かれこれ5.6年は使っただろうか?
パッキンだけうってるかな?



 撤収。
地面がカチコチになっていて。釘抜き付きのかなづちを持ってたから良かったものの、なかったらペグが抜けなかったかも。



 さて、地面もカチコチなことだし。
同じく昨年秋に買っておいたものの、出番がなかったこいつを試してみよう。
モンベルのスノースパイクシングルフィット。
4本爪軽アイゼンのなかでも最もシンプルな造り。
その名の通り足の甲側でバンド一本だけで留める。



 夜間の冷気で固くしまった地面に、アイゼンの爪がカリッカリッと心地よく刺さる。



 2月の頭にはほとんど雪のない富士山だったけど、本来の富士山らしい姿になっている。



 凍結した巻道も。
さして傾斜がないのでアイゼンなしでもあるけるが、あったほうが安心感が違う。



 下段の巻道、倒木や崩落でずいぶんと荒れている。



 七ツ石小屋下分岐まできて、軽アイゼンを外す。
いや、なかなかよいなこれ。
私は長年いろいろなものを試した末、モンベルの4本爪「コンパクトスノースパイク」をもっとも愛用している。
用途が近いコイツのことは当然知っていたものの、傾斜地に立てばすぐにずれてしまう欠陥品ではないか?と思っていた。
その点については道のなだらかなこのコースでは検証できなかったが、一般論でいえば傾斜のきつい場所では4本爪ではなく6本爪以上を使えということだろう。
私が4本爪を偏愛しすぎているだけで。

この「スノースパイクシングルフィット」は4本爪のある特長を極限まで追求したものなのだ。
すなわち凍結箇所と全く雪のない場所とが混在する山で、必要に応じてつけたり・外したり・またつけたり、を最もやりやすくしたのがこの形なのだろう。
外したときに泥と雪とで派手に汚れて、じゃらついて意外としまいにくいチェーンとちがって。
汚れる箇所がそもそも大きくなく、付属の小さなケースに簡単にしまえる。
ケースも小さくて紐がついているので、ザックなりベルトなりに吊るしておけば、再び必要なときにさっと装着できる。
なるほどね。

同じ4本爪でも傾斜のある場所では「コンパクトスノースパイク」に分があるだろう。
(そもそもそっちは4本爪でありながら食いつきの良さ・制動力を追求した製品だ)
だが、こっちはこっちで悪くないな。
使うかどうかわからないなだらかな春山に、お守りがわりにザックに入れておくにはこいつのほうが良いのかも。



 鴨沢まで降りてくると暖かくてTシャツ1枚になりたいくらいだ。
この時11時頃。



 バスの時刻は頭に入っているので、鴨沢バス停には向かわず、直接東へ。



 留浦バス停の前にザックを置いて、貴重品だけ持って眼の前の食堂に。
11時開店なので、この店は。
そしてバスは11:50に来るので、



 一杯やるにはちょうどいいというわけだね。
昨日寝る前は千本ツツジから赤指尾根を南下して、1104ピークから留浦に降りる予定だったのだけど。
とにかく寒くて寝袋を出られなかった為、予定を変更して素直に鴨沢ルートで降りてきた次第。



 カツ丼をかっこむ。
うむ、うまい。ごちそうさま。
何度か利用しているこの食堂が島勝という名前だと最近知った。
東京都で最も西端の店なのだとか。
言われてみれば確かにそうだな。



早く帰りたかったが、もえぎの湯によって汗を流していく。
一泊したあとだし、さすがにね。
風呂上がりに体重計で確認したら、ザックの重量が15kgもあった。
食料がほぼなくなり、水が全く無い状態で15kg。
重いわけだよ。
しかし今回、無駄なものはほとんど持っていかなかったのになあ。
冒頭の荷物の写真のほかは、スマホと予備バッテリと財布くらいで。
道具の軽量化か。うーん、予算が。
ツェルトと半身マットがあればそれだけで寝られる夏が恋しい。

0 件のコメント:

コメントを投稿