2019年2月11日月曜日

ユニクロ、ブロックテックの謎

(続編?)
ワークマンのイナレムはムレナイ夢をみるか

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数年前だったか、ユニクロでブロックテックパーカーを初めて見た時は
「とうとうユニクロが防水透湿アウターの分野にまで手をだしてきたか!」
と驚いたものだけど。
落ち着いてよく見れば耐水圧・透湿性のカタログスペックが未公表で、値段も決して安くはない。

これは山に限らずだが。
雨の降る屋外で長時間活動するために、安くて良い性能の雨合羽を探したことのある人ならば分かると思う。
「透湿性」を謳っていながらスペックが未公表の製品というのはおしなべて信頼できないものだ。

そんな訳でブロックテックへの興味はその場かぎりで失せてしまったのだが。
数年ぶりに店頭で見かけたブロックテックのパーカーは価格も下がり、デザインも幾分とよくなっていた。
現在私はエントラントGⅡの雨合羽の上下を持っている。
基本雨の日は山に登らないのだが、いざという時の防風・防寒のお守りも兼ねて、ザックに突っ込むこともある。
ただデザインは蛍光黄色と黒のド派手な色合いで、防風対策として気軽に羽織るにはやや厳しい。
着心地も思いっきり雨合羽のゴワゴワだし。
その点で言えば、ブロックテックパーカーは落ち着いた色と生地の風合いで、街着としても違和感がない。

街着用のウィンドブレーカーも別に持ってはいるが、少し早足で歩き回ったりしているといつの間にか脇が汗ばんだりしする。
多少なりとも透湿性があるやつが欲しいなと思っていたところだった。
がぜん興味が蘇り、購入したのが12月のこと。

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改めて、このブロックテックの性能はいかほどのものか。
ファスナーは止水ファスナーで、縫い目は裏からシームコートと最低限の格好はついている。
決して見掛け倒しではない。
でも表地は水を吸いそうな素材だ。
撥水スプレーを使うにしても、雨具としての過剰な期待はできそうもない。
短時間の小雨ならば構わないだろう、という程度。

問題の透湿性だが、これがさっぱり分からない。
なにせ天下の大企業ユニクロが強力に展開している製品なのだからして。
ネットをググればいくらでも感想・レビューがあるだろうと思っていたのだが……無い。
これが不思議なくらい、本当に無い。
特に透湿性能を必要とする者の視点でのレビューが全く無い。
それでもいくつか参考になったものを挙げておく。


6,000円以下で防水・防風・透湿性を兼ね備えた優秀パーカの実力とは!?|YAMA HACK
https://yamahack.com/2447
こちらアウトドア関連ブログのYAMA HACK
防水シェルとしての評価を登山用ブランドの製品と比較していて、短いながら良くまとまった記事だと思う。
ただ透湿性能についてはまったく触れていない。



ユニクロのブロックテックパーカの透湿性、撥水性を調べてみたよ!
https://www.humbert-tomoyuki.com/entry/uniqlo-block-tech-parka

ユニクロのブロックテックシリーズVSゴアテックスについて
http://don-tknow.hatenablog.com/entry/%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%81%AE%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%86%E3%83%83%E3%82%AF

こちらの2つは個人ブログながらユニクロ社に直接問い合わせを入れる行動力が光る。
耐水圧は8000~10000、透湿性は社外秘、という回答を引き出している。


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これらのブログを読んだ時点で、私の心象はだいぶ悪くなった。
ただ、レインウェアの透湿性能についてはアウトドアブランドのしっかりした製品であってもカタログ数値がそのまま使用感の良さというわけでもない。
良し悪しは使ってみないと分からない部分が多い。
ならば後は私が実地で使ってみるのみだ。
そんな訳で12月に購入してから2ヶ月程、街着・登山着としてハードに使い倒してみた結果を述べたい。

まず街着として。
生地の質感は良いのだが、なぜか首元、顎のあたるあたりが妙にゴワゴワとしてかたい。
これに関しては「襟が立つ」ことを意図したデザイン的な理由なのだろう。
着心地かデザインか、好みの問題かと。
街着としての透湿性能は確かに感じる。
透湿性0のウィンドブレイカーだと蒸れるような感じが、ブロックテックだとあまり無い。
街着としてならば充分な性能ではなかろうか。
難をあげるならば、フードが浅すぎること。
風が冷たくて耳がヒリヒリするような時にさっとかぶれるのはいいが、おでこのあたりにフードが無いため、顔面にあたる強風や雨粒から顔を守れない。
この点は帽子との併用が必要だと感じた。

次に山でのウィンドシェルとして。
この秋冬は暖かくて防風のシェルの必要はほぼなかったのだが、テストのためにあえて着てみた。
例えば青梅の長淵山ハイキングコース。
歩き始めて30分もしないうちに服の内側が蒸れるような感じがしてくる。
これに関しては私が汗っかきなのもあるし、ゴアだろうと蒸れる時は蒸れる。
問題は着たままでどの程度乾くのか。
青梅駅に帰ってきた時は、服の内側が汗でかなり湿った状態だったが、そのままファスナーを下ろす事無く着続けてみる。
昭島で降りてスポーツデポを見て回り、インドカレー屋でビール飲んで飯食って、立川駅に着いた頃には7割方乾いていた。
思ったより悪くないじゃない、というのが率直な感想。
何度か同様に使ってみても「乾きやすさ」の評価は変わらなかった。
現在ミドルクラスの雨合羽としてはメジャーな東レのエントラントGⅡを使った製品と同等か、それに近い透湿性能はあるのではないか?というのが私の体感評価。

つまり
耐水圧:8000~10000mm(製品には非表示ながら、ユニクロの広報が出した数値)
透湿性:5000~10000g/㎡/24h(私の体感評価からの推測)
くらいはありそうなのだ。
値段も性能もエントラントに近い、という事になる。
後は雨具としての信頼性を取るか、ファッション性を取るか、ではなかろうか。

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ここで改めて疑問が湧く。
値段を考えれば決して隠さねばならないようなスペックではない。
むしろ誇ってもいいくらいだ。
なぜスペックが、とりわけ透湿性が非公表なのか。

私が推測するに、
1.あくまで街着であって、アウトドアウェアとして命にかかわるような使い方をされても責任が持てない。
2.スペック競争に踏み込むつもりがない。ユニクロとはそういうブランドではない。
3.エントラントごときと実用性で張り合うつもりなどない。それならばノースフェイスのマウンテンジャケットなどの一般人に知名度のあるアウトドアブランドと”同じカテゴリの製品”だと勘違いさせたままにしておいたほうがいい。
といったあたりではないだろうか。

長々と書いたが、さて、これは必要の無い記事だったかな?
山用のシェルとしては、もう2700円出せば透湿性能15000g/㎡/24hで雨具としての信頼性も充分なモンベルのサンダーパスジャケットが買えるのだから。
ユニクロ製品をどうにかして山で使えないかとあれこれするのも虚しい。

ただ街着としては、蒸れにくい透湿性のあるウィンドブレイカーとしてなかなか良い製品であるのは間違いない。
そっけないデザインだが、もともとユニクロの良さってそういうものだったと思う。
安さをデザインで下手にカバーしようとして逆に酷くしてしまうのでなく、柄のない単色で開き直ったシンプルなデザイン。
それが時代にウケたのだと記憶している。
近年のユニクロは割とそうでもないが、それはそれとして。


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(2020/1/12追記)
ほぼ2シーズン、山でも街でもハードに着まわしてみた後での感想。
「多少なりと透湿性があって、小雨程度ならなんとかなるウィンドブレーカー」としてならわりと優秀。
ただし雨具としての機能は期待してはいけないし、撥水力もすぐに衰えるので撥水スプレーを吹いてやる必要はある。
上で述べたように、多少金額を足せば機能的にはもっと優秀なレインウェアを買えるが。
街着として違和感ない着心地・デザインなのが良いところね。
ただ生地の肌触りが良いことの裏返しなのだけど。
2シーズンも着ていると肩掛けカバンのベルトがこすれる場所が毛羽だってくるというか、小さな毛玉ができる。
3シーズンも着たら買い替えになるかな。

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(2020/12/24追記)
元々中にフリースやダウンベストやらを着込むことを想定して3XLと大きいサイズを使っていたのだが。
糖尿病の治療と食事制限とで随分と痩せてきた。
手持ちの服がぶかぶかになり、ブロックテックパーカもだぶついてきた。
ユニクロオンラインで服を物色している時に、ブロックテックパーカーの在庫処分で「XXLのみ、2980円」というのがあり、思わず買ってしまった。
届いたものに袖を通し、フードをかぶってファスナーをあげてみて、真っ先に気付いたのはフードの浅さが改善していること。
以前のものはおでこが丸出しになるようなフードの浅さだったのが、いまのは適度におでこが隠れる。
それでもまだフードが浅めであることには変わりないが、だいぶマシになった。
左の緑が2018年購入のもの。
右の灰が2020年購入のもの。
広げてみて、ぱっとみて分かる差でもないが、ともあれマイナーアップデートされたようだ。
他にも生地の型とか、ファスナーのつまみが大きくなったりなどの細かい変更が見て取れる。
最近はワークマンなどで同じようなコンセプトのシェルが出てきている。
一方でユニクロの店頭では以前ほどブロックテックを推さなくなってきているような印象がある。

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