以前、ワンポールテントのフライだけを使用する「フロアレスシェルター」の記事をいくつも書いた。
その1、雲取山編(初使用)
その2、巾着田編(砂地でのペグについて)
その3、大菩薩編(設営と撤収の詳細)
その4、笠取山編(裾からの風の吹き込み対策)
その5、小金沢連峰編(ワンポールをAフレーム化)
幕営における一つの究極だと思う。
重量ではなく、構造のシンプルさ。
設営と撤収の早さなどから、そう断言できる。
ただテントの中央・一番天井の高い場所に柱があるというのはやはり邪魔なもので。
慣れれば慣れるし、Aフレーム化という対策もあるが、十分ではない。
そんな結論を出していたある時、ツイッターのフォロイーが面白いテントを使っているのを見た。
直接教えてもらったのが、3FULという中国メーカーのランシャン2ULというテント。
その方のブログを張っておく。
ランシャン1がいわゆるワンポールテントで1人用なのだが、
ランシャン2はツーポールテントで2人用なのだ。
横たわった時に腰の両脇にストックを立てるようにするため、この「柱が邪魔」問題の解決策になるのでは?とがぜん興味がわいた。
ただこれ、インナーテントがほぼメッシュ(蚊帳)という中華テントにありがちな奴で。
インナーを使わないなら関係ないが、使いたい事もあるかもしれないなあと悩んでいたのだが。
調べるとインナーがメッシュではない、4シーズン用のが中国本国にはあるらしい。
海外通販は初めてで緊張したが、aliexpressで取り寄せた。
船便なので多少かかる。
生地の薄いコンプレッションバッグに入っている。
20Dの薄い生地の割りには意外と軽くはないな。
フレームは無くストックで建てるので……
それでも本体のみなら1000gを切るわけだ。
こいつは軽い。
ペグ打ち必須の非自立テントなので、部屋の中で試し張りできないのが残念。
連結のプラ金具を見てもいまいちよくわからない部分もあるが。
あとは現地で試してみればよかろう。
ツェルトだってそうして張り方を学んだのだし。
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2泊3日でやってきた奥秩父でこのテントを試してみる。
まず1泊目。
両脇もペグダウンして……って、なんだこれは?
明らかに間違っているくさい。
あー、なるほど。
こいつは先にフライシートを張って、後からインナーテントを吊るすんだな。
予備のアルミペグを4本だして、フライを広く打ち直す。
多少はマシになったか?
フルにペグを打つなら、4本の張綱を取るようだが。
まあ、これでいいか。
張綱など無くとも風を受け流す構造の為耐風性が高いのがワンポールテントの利点だったはずだが。
しかしこうしてみるとワンポールテントよりかは耐風性が低そうだ。
ワンポールテントは四角錘のピラミッド型だが。
こいつは横から見ると四角い面になる。
入口側も傾斜が急で、風の影響が大きそうだ。
風の強い時は張綱を張るべきなのかな。
広い前室だ。
天井が広い。
それは別に問題ない。
広い。
一般的に山岳テントは短辺側入口の方が限られた設置場所でも出入りしやすく、
長辺側入口の方が快適と言われる。
ところでソロの人であっても本当に1人用のテントを使用する人はほとんどいない。
大抵は2~3人用(幅130cmくらい)を使用するし、
多少ストイックな人でも1~2人用(幅90~100cmくらい)を使うはずだ。
なぜなら寝床を敷いて、そことは別に荷物を広げたり作業したりするスペースが必要だから。
私が短辺側入口を好きになれないのは外からテント内に入った時、
最初の第一歩で寝床を踏んずけなければならない事なのだ。
長辺側入口ならば、入ってまず作業スペースがあり、その奥に寝床がある。
そのレイアウトが良い。
つまりだ。
寝床の上で上半身を起こして座った時、あなたはどちらを向いているだろうか?
たぶん荷物を広げてある作業スペースの横を向いて座るはずだ。
なのでその際に感じる「天井の広さ」とは寝床に平行方向ではなく、
寝床に交差する方向に広いことなのだ。
そのことをしみじみと理解した。
ワンポールテントをAフレーム化してもいまいち快適に感じないのはそれが原因だったのだな。
夜。
強い雨風に雷まで鳴りだす悪天候になった。
多少木は生えているとはいえ、2000m級の稜線だ。
だいぶ心もとなかったが、張綱なしでも倒壊することなく朝までもってくれた。
意外と耐風性も悪くはないのかも。
ただ短編方向のフライが風を受けて内側にたわみ、インナーテントと接触した状態になったせいで、インナーテントが濡れてしまった。
耐風性もあるが、快適性の為にも張綱は必要だった。
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2泊め。
今度はちゃんとフライから張る。
フロアレス運用するならこの状態でインナーテントの代わりにシートを敷く事になるだろう。
どうも本来想定されている「ビシッ」と張った状態だと、フライと地面との隙間がかなり開く設計のようだ。
特に入口側の裾と地面の間はかなり開く。
フライだけでフロアレス運用するにはちょっと厳しいだろうか。
追加で張綱を張れば、全部でペグは10本になる。
意外と手のかかるテントだ。
この場所は谷間で風の影響はほぼないので、張綱は無くてもいいかな。
それにしても短辺側のフライの中央にループがあって、風を受けて内側にたわまないように張綱をはるのがまるでツェルトのサイドリフターのようだ。
!
突然理解が降りてきた。
そうだ、どうして気づかなかったのだろう。
これはワンポールテントをツーポール化したというよりも、
ツェルトをダブルウォール化したものと言った方が近い。
ツェルトの短辺(入口)側を長くし、長辺側を短くしたもの。
それをダブルウォール化したものがこれなんだ。
ならば張り方もツェルトの張り方のコツを流用できるのではないだろうか。
まあ、それは次回だ。
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それでは2泊使用してみた感想を。
ダブルウォールで1000gを切る超軽量テントは数あれど、この低価格でここまで快適なものはなかなか無いだろう。
魅力の多いテントではあるが、しかし癖も強い。
ツェルトを綺麗に張る事ができる人ならば、こいつとも付き合っていけるかもしれないが。
テントの設営に手間をかけたくない人には向かないかもしれない。
それとワンポールテントとツェルトとの比較で長所短所をあげてみたい。
・ワンポールテントとの比較
〇 中央に柱がなく、天井が広くて快適
× より多くのペグ打ちが必要で手間がかかる
× ワンポールテントよりも風の影響を受けやすく、耐風性・快適さの為に張綱が必要
・ツェルトとの比較
〇 ダブルウォールかつ通気性が良いので結露しらず
中でストーブを使ってもまったく問題ない
〇 天井のリッジが寝床に平行方向ではなく、寝床に交差方向なので
身を起こした時の体感的広さが圧倒的によい
× 重い
× ツェルト以上に設営に手間がかかる
△ ストックを引っ張り・サイドリフターを引っ張るための張綱が必要であり
床面積以上の実質的な専有面積がかなり大きいのは共通
詰めあって設営しなければならない山のテント場では厳しい
2021/5/18追記
ツーポールテントを試すその2@小金沢連峰
(フライだけをフロアレスシェルターとして使用)
2021/8/30追記
ツーポールテントを試すその3@雲取山
(真面目に山岳用軽量テントとして考える)
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