2018年2月18日日曜日

初心者向け、アイゼンの選び方

新しく書き直したのでこちらを見てください

軽アイゼンの選び方(2020年版)
https://yamatabinokiroku.blogspot.com/2020/05/2020.html

(2020/5/8)








前の記事は思いつくままにどんどん書き足していったら、ひどく乱雑で見苦しい記事になってしまった
なのでこちらに新しく書き直す
私自身の経験から、主に軽アイゼンの特徴を初心者向けに紹介できたらと思う

登山をはじめ、雪のある時期も低山に登ろうとする人が、何を買ったら良いかの参考にしたい
私自身ぬるいハイカーなので、森林限界を越えたガチの雪山に挑むような人には伝えられることは何もないです

また、関東甲信伊豆あたりの低山で冬に使うことを想定している
2000mくらいといっても、雲取山と東北や北海道の2000mでは大分様相が異なると思うので、他地域の方は鵜呑みにしないでください

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1.アイゼンの種類
先にカテゴリーの概要を
アイゼンとはつま先側のプレートとかかと側のプレートとを連結したつくりになっていて、六角レンチなどで靴のサイズに合わせて調整する
登山靴によってはアイゼンを装着するための溝があり、そうした靴専用のワンタッチタイプもあるが、ここでは割愛する
足裏全体を乗せるため、滑り止めとしての本来機能に関しては抜群の信頼感がある
実際の所、アイゼンといっても本当の冬季縦走用の爪の長いのと、
もう少し気軽な使用を想定した爪の短めのものとがあり、センターバーの硬さだとかもあるようだが、そのへんは私の知る範疇ではないのでこれも割愛する

軽アイゼンとは小さめの1枚プレートで靴裏の一部分のみを乗せるため、部分的に滑り止めが効かない部分が残る
その分小さく軽く、なにより軽登山靴のメリットをある程度いかせる

チェーンとは近年普及してきている軽アイゼンに代わるもので、車のタイヤにチェーンを掛けるがごとく、靴底側にチェーンを掛ける


次にどのような種類があるのかを列挙してみる
◆12本爪(アイゼン)
(ブラックダイアモンドのシラクストラップ)
アイスクライミングも含め冬季登山のあらゆる局面に対応する


◆10本爪(アイゼン)
(グリベルのG10ワイド)
12本爪とほぼ変わらないものもあるが、アイスクライミングはやらない人向けに前爪の小さな物が多い


◆8本爪(アイゼン)
(モンベルのLXTアイゼンワイド)
10本爪から前爪を除き、代わりに一番前の爪がつま先よりについている
用途としては10本爪とほぼ同じだが、ややマイナーか


◆6本爪(軽アイゼン)
(モンベルのスノースパイク6)
靴底の中ほど5~6割位をカバーする
軽アイゼンとしてはもっとも普及していて使いやすい


◆6本爪(軽アイゼン)足幅調整タイプ
(エバニューの巾調整式6本爪アイゼン)
上記の高級品
自分の靴の横幅に合わせて調整が出来るため、6本爪の悩みの「ずれる」点を軽減できる


◆4本爪(軽アイゼン)
(マウンテンダックスのHG121)
靴底の土踏まずの部分だけをカバーする
小さく軽く、値段も安価


◆4本爪(軽アイゼン)1本締めタイプ
(モンベルのスノースパイクシングルフィット)
上記の簡易版
道の状況次第で着けたり外したりするのに対応しやすい


◆チェーン
(ルッドのチェーンアイゼン)
シリコンゴムバンドで靴に引っ掛け、靴底にチェーンを掛ける
アイゼンのようにプレートが無いので靴の曲がりを妨げず、またほぼ靴底全体をカバーする


◆チェーン 爪付きタイプ
(モンベルのチェーンスパイク)
上記の進化版、最近のチェーンはほぼこれ
チェーンの一部が小さな爪になっている



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2.レビュー
(ここでの紹介は私の使った事のあるものに限る)
「大は小を兼ねる」とは言う
アイゼン本来の目的である滑り止め機能に関しては確かにそのとおりなのだが
必要の無い路面状態で使用すると、歩きにくい・体力を消耗する・登山道にダメージを与える、などのデメリットもある
その為単純に上位のものを使えばいい、と言うものでもない
まして森林限界下の樹林帯で、トレースのある一般ルートを歩くのならば、6本爪で力不足という場面はほとんどありえないのだ
そういう状況で本アイゼンはデメリットが大きすぎる
だが、他でのアイゼン案内・紹介の類をみると……他人の安全に関わることからか、どうも過剰に上位の本格アイゼンを奨める傾向にあるように思う
そうならざるを得ない理由も分からないでもないが、実際の所具体的にどんな山に・どんな時に登るのかによってベストな選択は変わってくる
(繰り返すが、私は関東周辺の森林限界よりも下の、トレースのある一般ルートを想定している)
どんなものにも長所と短所があり、一概にどれが良いとは言いにくいものであることは理解していただきたい

◆10本爪
圧雪での制動力:A
圧雪斜面での制動力:A
凍結での制動力:A
凍結斜面での制動力:A 抜群の信頼感
コツのいらなさ(制動力を効かせるのに):A つま先からかかとまで爪があり、どんな足の場面でも制動力が効く
コツのいらなさ(体力への負担面):D 重い、急斜面の登りがツライ
小回り:D でかくて置き場に困ることも。軽アイゼンと比べると靴のサイズ感が一回り大きくなったような感じ
足裏感覚:D 靴全体をプレートに乗せるので、完全に無くなる
バンドの締めつけ感:B かかと側とつま先側を前後に絞るので、意外と違和感は小さい
(雪のない)登山道へのダメージ:D 荒らしまくる
値段:D お高い

総評:滑り止めA/使いやすさC
滑り止めとしては文句なしの信頼感だが、基本的に樹林帯よりも上の、ずっと積雪があり・固くしまった状況で使うべきもの
低山ではオーバースペックで使いにい
安全第一であっても、初心者におすすめ出来るものではない


◆6本爪
圧雪での制動力:A
圧雪斜面での制動力:A
凍結での制動力:A
凍結斜面での制動力:B つま先とかかとに爪がない事に少し注意がいる
コツのいらなさ(制動力を効かせるのに):B 急斜面でかかととつま先だけを使うのは避けねばならないが、概ね使いやすい
コツのいらなさ(体力への負担面):C 10本爪よりはマシ、登りで靴のつま先を曲げられると言うのは思った以上に脚の疲労を軽減する
小回り:C 悪くはない
足裏感覚:C 靴半分強をプレートに乗せるので、歩きに応じて靴が曲がるのに多少は対応できる
バンドの締めつけ感:D 指の付け根あたりを足の甲で縛るので違和感が大きい。6本爪の欠点として靴底でずれやすいことが違和感をさらに増大させる
(雪のない)登山道へのダメージ:C 10本よりはマシだが、木の階段・木の根などへ爪を立てないように選ぶことは難しい
値段:C そこそこ

総評:滑り止めA(低山では)/使いやすさB
軽アイゼンの王道、低山で使う分には6本爪で足らないということはまずない
各地のビジターセンターなどでも雪の降った後などは「最低でも6本爪を持ってきましょう」と呼びかけることがあり、実際6本爪を持っていれば間違いがない
一方で雪が少ない状態、あるいは陽があたり雪がない場所と日影の凍結箇所が入り混じっている状態ではやはりオーバースペックで逆に歩きくくなることも少なくない
ずれやすいという6本特有の問題もある
選ぶならかかとから足首への保持のしっかりしたものが良い


◆4本爪
圧雪での制動力:B
圧雪斜面での制動力:C 登りのさい、つま先で蹴るとあっさり滑る
凍結での制動力:C つま先とかかとは添えるだけ、慎重に
凍結斜面での制動力:D チェーンと違って爪をしっかり刺せば制動は効くものの、正直かなり心もとない
コツのいらなさ(制動力を効かせるのに):D なにしろ土踏まずにしか爪がないので、しっかりと踏み込む必要がある
コツのいらなさ(体力への負担面):D 土踏まずだけに爪があるというのは一本歯の下駄のようなもので。刃の刺さらない状況では歩きにくい。ただこれは慣れれば改善出来る
小回り:A 慣れが必要だが、慣れれば小回りは大変に良い。つま先とかかとには全く滑り止めが効かないが、雪のない場面ではその部分を普段と同じように使うことができる
足裏感覚:A 同上、雪であれ、土であれ、爪が刺さる状況であれば普段の登山靴と同じ感覚
バンドの締めつけ感:B 締め付けるのが主に足の甲から土踏まずにかけて、サブとしてかかとなので、違和感は6本爪より大分マシになる
(雪のない)登山道へのダメージ:A 爪があるので土をえぐり、木道や橋を傷つけてしまうのは致し方ないが、一方で爪が土踏まずにしか無いため、慣れれば爪を立てる場所を選べるようになる。木の根や丸太の階段に爪を置かないように避けることが可能
値段:A 大変お安い

総評:滑り止めC/使いやすさA~D
玄人好み、値段のやすさに惹かれて初心者が最初に買うのはおすすめしない
滑り止めの機能・歩きやすさ共に不慣れな段階ではデメリットが大きいが、慣れてくることでメリットが大きくのびてくる
アイゼンで滑らないのではなく、アイゼンなど無くても滑らない歩き方をするべきだが、それでもつるつるの凍結や斜面の圧雪などでどうにもならない時、必要最小限の滑り止めアシストをしてくれるのが4本爪
小さくて軽いので、使うかどうか分からない残雪期にとりあえずザックに入れておく「お守り」としても良い
ただ最近はチェーンの普及に押され、山で使用している人もあまり見かけなくなった


・チェーン
圧雪での制動力:A
圧雪斜面での制動力:A つま先までカバーしているのは大きい
凍結での制動力:C カチカチに凍っているとチェーンでは食いつきが悪い。それでも平らなところならば……
凍結斜面での制動力:D 危険。小さな爪付きのやつならばいくらかはマシなのだろうか(使用経験なしのため断言できず)
コツのいらなさ(制動力を効かせるのに):A コツなど不要。靴底全体をカバーしていて・靴の曲がりに追随して・刃の出っ張りがないのだから、足をおけばチェーンが働く
コツのいらなさ(体力への負担面):A 同上
小回り:B アイゼンや軽アイゼンとは全く別のものなので評価しにくいが、悪くはない。ただ、ふかふかの新雪や圧雪の緩んだみぞれ状態で使うとチェーンが雪玉(氷玉)になって難儀することもある
足裏感覚:B 靴の曲がりに追随するのでかなり自由。とはいえ靴底と地面との間にチェーンが挟まっていることに違いはない
バンドの締めつけ感:A 皆無。ただしこれはバンドが外れるんじゃないかという不安感と表裏一体
(雪のない)登山道へのダメージ:A 4本爪のように刃の置き場を選んだりは出来ないが、そもそも刃がないので木道などへのダメージはもっとも小さいはずだ(小さい刃のあるタイプについては別考慮)
値段:B~C 安めのものから、6本爪位のものまで

総評:滑り止めA~D/使いやすさA~B
昔は「あんなもの山で使うものではない」などと言われもしたが、近年急速に普及してきている
圧雪や薄く凍った程度では充分な制動力だが、低山ではまれなカチカチに固く凍結した場面ではアイゼンの刃のようには食いつかず危険
また急斜面に立った時、靴に引っ掛けただけのゴムバンドが不安
その2点が主に批判されてきた理由なのだが、低山ならばそういう局面は少なく、またその2点を除けば非常に扱いやすい
今ではエバニューやモンベルなどからも、小さな刃のついたものがでている
冬の低山には実際の話、とても適しているのだ


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3.初心者が買うべきもの

まず最初はチェーンをおすすめする
靴裏全体に滑り止めが効いて、歩き方にコツが不要で歩きやすい
なにより雪のない場所での歩きやすさはアイゼンの比ではない為、「陽のあたる場所では雪などないが、日影では凍結している」という降雪の少ない地域の冬の低山にもっともあっている
純粋なチェーンだと凍結があった場合に不安があるが、最近のチェーンは小さな爪のついたものもあるので、その弱点も多少はカバー出来ていると思う
メーカー名のない海外製の安いやつではなく、信頼のおけるメーカーのものを買いましょう

チェーンで力不足を感じるようになったり、そういう山に行くようになったらば、次に6本爪を買えば良い
森林限界よりも下の樹林帯で、トレースのある一般ルートならば6本爪で力不足ということはまず無い
プレートがずれるのはつらいので、かかとから足首をしっかりと保持する奴がよい
予算に余裕があるなら巾を調整出来るのもいいかもしれない

6本爪では力不足というのは、つま先だけ・かかとだけでも爪を立てる必要があるということであり、つまりピッケルも必要な場所へ行くということであり
そうなったらば、熟達者・専門書・登山用品店の店員などを頼ってくださいな



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4.おまけ・私の購入履歴
アイゼンという存在すらしらず、3月の武甲山に挑んでしんどい思いをする

マウンテンダックスの4本爪
アイゼンは高い
安さに引かれて買ったはいいが、歩き方がなっておらず、充分に使いこなせず、負担に感じていた

ルッドのチェーン
そこでもっと使いやすいものはないのかと探し、当時はまだ普及していないチェーンに目をつけた
これが予想以上の使いやすさで、しばらくはこればかり使っていた
またRUDのチェーンは土踏まずの部分にチェーンがかかっていないため、凍結のある場所では4本爪を装着した上からチェーンを装着するという妙な真似もしていた
(ただこれは今でも悪くない発想だと思う)
欠点として雪の状況次第ではすぐ雪玉をまとって重くなってしまう
使っているうちに岩角を踏んで、チェーンが切れてしまった

モンベルのスノースパイク6
ここにいたり、安い物をアレコレ工夫するのではなく、ちゃんとしたものを買わねば駄目だなと思い、6本爪を買うことにした
(この時4本爪も処分してしまった)
ただ6本爪はどれも高い、そのなかで比較的安価だったこれを買った
滑り止めとしては確かに文句ないが、靴底でずれたり、バンドの締め付け感などからイマイチ好きになれない
これはたぶんモンベルのスノースパイクが良くない(プレートが小さく、ずれやすい固定方法)のであって、ものを選べばもっと快適に使えるのではないかと思う
モンベルのコンパクトスノースパイク
そうこうして経験を積むうちに、またモンベルの6本爪がイマイチ好きになれないでいると、「4本爪も実は悪くなかったのでは?使い方次第なのでは?」と思い返すようになり、再度購入したのがこれ
土踏まずだけに爪のある、カテゴリ的には4本爪だが、実際には8本爪がある変わり種
小さいながらも制動力を増すための工夫と、雪がつきにくいプレートを採用している
現在もっとも愛用しているのがこれだ

制動を効かせるのにコツが要るとは書いたが
そもそもアイゼン類を使わない状態でも滑りにくい歩き方と言うものがあり、小幅にゆっくりと歩き、垂直に足を抜き差しし、地面に平らに足を置く
こうした歩き方と4本爪の効かせ方(土踏まずの爪をしっかり差し込む)はほぼイコールなのだ

海外製のメーカー名なしの安い10本爪
https://store.shopping.yahoo.co.jp/wich/aizen10.html
ネットで検索するとよく出てくる奴
ページをみて「あっ……(お察し)」となるだろう
私も本心ではあてになどしていない
あくまで10本爪のアイゼンをちょっと経験してみるお試し程度に思っている
爪も短いしね
買ったはいいが、ずっと使っていなかった奴をここ最近使ってみた
既存メーカーのものを参考にしているようで、造りや使用感は意外と悪くはない
軽アイゼンと違い、凍結箇所での安心感信頼感はさすが抜群だが、自分の山行スタイルではそもそも10本爪は不要な物だと理解した
ちなみにケースのファスナーがいきなり割れた

(追記:VGEBYというメーカーらしい。スポーツアウトドアっぽいグッズなどを製造?販売?しているようで、箸にも棒にもかからないほどの粗悪品ってことはなさそうだが……)

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