奥多摩三大急登、という言い草がある。
三大といいつつ候補が無数にあって、人によって中身が変わるやつ。
誰が選んでも稲村岩尾根はまず入るが、後はバラバラ。
先日氷川屏風を登っていた際に歩きながら考えた事なのだけど。
そうなっている理由がぼんやりとだが浮かんだのでメモしておきたい。
先に結論を
1 奥多摩には来る人が多いので
1-1 平均レベルが低く、ちょっとした登りでもキツイと思われがち。
1-2 そのキツイが共感・共有・流布されやすい。
2 林業の仕事が丁寧であるがゆえ、急斜面の作業道を通るハイキングコースが作られる。
3 なので「急登」と目される所はたくさんあるが、日本三大急登や北アルプス三大急登になぞらえたものだから、そもそも3つに収まるものではない。
1.
奥多摩は首都圏から近く、山へ登るための公共交通機関の便もいい。
コースも比較的整備され、ガイドブックの類も多い。
その為訪れるハイカーも多く、その中には初心者や高齢者も多い。
ちょっとアレな言い方になるが……いきおいハイカーの平均レベルは下がる。
なので客観的に「急登」かどうかはさておき、その登りを「キツイ」と感じる人数は多くなるだろう。
またそう感じる人数が多ければ、その感じ方は共感され・共有されやすい。
それが奥多摩に「急登」が多い理由の一つではないか。
2.
頻繁に奥多摩の山を、定番コースからは少し外れたようなコースを歩いていれば目にするはずだが。
奥多摩の林業は素晴らしく行き届いている。
非常に急斜面な場所でも杉の植林がなされ、間伐・枝落とし・下草刈りがなされた美しい(何が美しいかの基準はあろうが)杉林なのだ。
たまに地方の低山などを歩くと、その差は歴然としている。
そして急斜面に林業者の作業道や踏み跡ができれば、ハイカーもそこを歩くようになり、場合によっては正式なハイキングコースに格上げにあるのかもしれない。
それが奥多摩に急斜面のコースが多い理由の一つかもしれない。
3.
ところで「奥多摩三大急登」という言い草は、明らかに「日本三大急登」(北アのブナ立尾根、谷川の西黒尾根、南アの黒戸尾根)や「北アルプス三大急登」(ブナ立尾根、合戦尾根、早月尾根)になぞらえたものだろう。
だがそもそも「急登」と目される尾根が既にいくつもあり、特にどこか権威のあるとこが選出するのでもなければ……そもそも3枠に収めるのに無理があったのではなかろうか。