2019年3月21日木曜日

2019/03/17日 近くて遠い@鍋割山

0527 新宿 小田急線急行 新松田行
0644 渋沢 669円
0648 渋沢駅北口 神奈中バス 渋02大倉行
0703 大倉 206円

大倉~西山林道~二俣~後沢乗越~鍋割山(昼食)
 山と高原地図で4:30/守屋地図で4:00/今回の私のタイム3:26
鍋割山~小丸分岐~小丸尾根~二俣~西山林道~大倉
 山と高原地図で3:20/守屋地図で4:00/今回の私のタイム3:31

大倉から15:30の送迎バスで、名水はだの富士見の湯へ
入浴1000円
17:30の送迎バスで秦野駅へ




「都心から一番近い百名山」と呼ばれる丹沢山。
山そのものも魅力的だが、交通の便が良いというのはたしかに良いものだ。
私も大山や塔ノ岳には数え切れないくらい登っている。
しかしその割に、鍋割山には未だ登ったことが無い。
大倉から登ろうと思えば標高の低い鍋割山の方が塔ノ岳よりも体力的には楽そうなものなのだが、私はこの山を意図的に避けてきた。

山頂に建つ鍋割山荘のオヤジさんは、いわゆる「気難しい山小屋のオヤジ」というか。
昔はたくさんいたが、今や絶滅危惧種な御仁のようなのだ。
いわゆる「口やかましい山小屋のオヤジ」には2つ理由があると思っている。
一つは山での安全の為、自覚の足らない登山者に厳しく指導する為。
後に振り返って「確かにあの時の自分は認識が甘かった」と反省するようになれば、厳しい言葉も感謝するようになるかもしれないが。
言われた時は理不尽に怒鳴られたと思うだろう。
もう一つは「学校の教師には頭のおかしい人間が多い」理論で。
話の通じない・マナーの悪い人間ばかりを相手にしていると、彼らの行動に責任を追わねばならない立場の人間も頭がおかしくなるという理論(暴論)。
高齢者の昔の登山の記録とかを読むと、今日の感覚で言えば信じられないような振る舞いを結構していて。
しかも悪いことをしているという感覚が無いようなのだ。
「旅の恥はかき捨て」な時代だったのかなあ。
私自身、山中や下山後の高齢者パーティの振る舞いに眉をしかめることが少なくなく、
「ああ、こういう人間を相手にしていたらそりゃあ怒鳴ることも増えるよな」
という理解をしている。

ただそれでも。
その2つの理由だけでは説明のつかない難物も居るには居るもので。
その点で鍋割小屋のオヤジさんは、南アルプスの農鳥小屋のオヤジと双璧らしい。
別に個人の人格を貶めるのが目的でこれを書いているわけではないので、最小限だけ述べる。
ここのオヤジさんはたいそうな強力で、ときに100kgもの物資を歩荷したそうな。
当然歩きはゆっくりにならざるを得ないだろうが。
ある時足の遅い人がオヤジさんの後ろを歩いていたら「さっさと追い抜いていけ」と怒鳴られたそうな。
私は今でこそ人並みの速度で歩けるが、
昔は滝のような汗を流し・ゼェゼェを息を切らし・コースタイムの1.5倍もかけて登っていた。
そんな私がオヤジさんと鉢合わせたら……と考えた時、鍋割山方面の敷居が高くなるのも分かってもらえるだろうか。

今はもう人並みの歩きができるし、いつまでもそんな理由で避けるのも馬鹿らしい。
長年の積荷を降ろしにいこう。



始発バスで来た大倉。
7時過ぎでもうこんなに明るい。
春分の日も近いからな。
コンビニでおにぎりを買い、コーヒーを飲みながらゆっくり支度しているともう次のバスが来た。増発便だろうか?
暖かくなってきて登山者の数も多くなってきた。


7:23に大倉を出発


大倉尾根の方ではなく、西へ。


畑の向こうに見える大倉尾根がなんだか新鮮だ。


串刺し公の畑だろうか。
鳥よりも人間が怖れてしまいそうだ。


畑の奥から林のなかへ


ももの花がいい頃合い。


林の中の道を通って西へ向かうと


西山林道のゲートのところに出る。


ここから延々と西山林道を北上する。


県民の森付近の交差点を過ぎ。


ようやく二俣に到着。
標識は無いが、ここが大倉尾根の堀山の家に至る登り口なのだろう。


守屋地図では珍しい赤破線(標識のあるハイキングコースだったが、荒廃している)
4.5年前までは普通のコースだったはずだが、そんなに難があるのだろうか。
そして1時間20分近くもあるいて、高度を230m程度しか稼げていない事にちょっと気持ちがしぼむ。
多分二俣から堀山へ登る人というのは、県民の森にマイカーをおいてこれる人なのだろう。


二俣の沢を渡り、


林道はまだまだ続く。


ミズヒ沢でようやく林道が終わる。


ここからようやく登山道になる。
流石に少し疲れたのでここで休憩をとる。


全長7.6kmのコースで、5.2kmも車道林道歩きだったわけですよ。


さて充分に休んでから出発。
いきなり荒れた沢の光景にびっくりするが、右手を登っていくようだ。


南北に長い尾根へ、東面から登っていく。
地形が急峻でそのため尾根沿い・沢沿いのルートが多い丹沢にあっては珍しい風景かもしれない。


上が切れた。
あそこが後沢乗越か。


後沢乗越。
一息つきたいが、西側が崩れ落ちた崖で狭い。


ここから鍋割山まではひたすら尾根上を登っていく。


後沢乗越から急に人が増えた。
寄(西側の松田町の登山口)から登ってくる人も多いのだろうか。


ある程度登ると傾斜も幾分なだらかになる。
向こうに鍋割が見えるが、なかなか近づかない。


犬神家っぽい木。


まだか。


山頂が近くなると馬酔木の花がいたるところに咲いていた。
小さな花だが寄って見るとおもしろい形をしている。


大倉尾根同様、こちらも登山者が多くて道が荒れてしまうのをなんとかしないと行けないのだろうが。
ブロックを土砂流失防止・足場として使っているのにはちょっと驚いた。


ようやく鍋割山に到着。


天気は、まあまあ。


大倉から3:26か。


南面の方は人がたくさんいて混んでたので、西面に座ってお昼にする。
富士山は雲をかぶってしまっているが、まあ悪くない眺めだ。
魔法瓶のお湯で味噌汁とラーメンを作る。

ここ鍋割山は付近に水場がない。
小屋の立地としてそれは致命的なように思えるが。
この展望の良い山に登山者を迎えるため、ほぼ個人の力で小屋を建て・登山道を整備し、登山者にうまい鍋焼きうどんを提供している。
宿泊者ではない登山者に出せる飯はカップヌードルくらいしか無いのが普通の山小屋である事を思えば、悪い人であろうはずがないが。
ちょっと怖くて小屋の中を覗いてくる気はしなかった。

近くに座った別のパーティで、鍋焼きうどんを手に仲間のところに戻った人が「(小屋の中は)戦場のような有り様だった」と評していた。



11:26に鍋割山を出発
塔ノ岳方面へ向かう。


北側を見下ろせば、ユーシンから塔ノ岳へ登る尾根が見える。
あっちも面白そうではあるが、玄倉バス停からユーシンまでが絶望的に長い。
ユーシンロッジの復活が無理ならせめてテント場として許してもらえないものか。


まだ新しい階段を登り、


小丸。
鍋割山と塔ノ岳の間だが、ここも南側の眺めが悪くない。
お昼を食べるのに混み合った場所よりも静かなのを求めるなら穴場かも。


もう少し東へ進むと小丸尾根分岐。
ここから南へ下る。


警告。
鍋割山頂にも別の警告があったが、遭難の多い尾根らしい。


麓の秦野と小田原と相模湾
大倉尾根から見える景色とはまたちょっとだけ違う。


東を向けば、ちょうど真東に大倉尾根の花立山荘が見える。
その向こうに表尾根の三ノ塔、その左後ろに大山。





道の状態については杞憂だった。
確かに尾根は急だが、踏み跡はジグザグクネクネとつづら折りにしっかりとついている。
スリップや滑落の心配はいらない。


ただなんというか、左手。勘七沢のほうに降りていく踏み跡がやけに多い。
勘七沢は人気の沢登りルートらしく、そっちから上がってくる人がつけた踏み跡なのだろうか。


切り株の根が浮き上がっている。
それだけ土砂が流失しているということか。


立て札があって、何かと見たらば小丸まで1000mとある。
1000m?


なるほど。水平方向に直線でいえば1000mくらいだね。


遭難が多いからだろうか。
紛らわしい踏み跡にはことごとくトラロープで通せんぼがしてあるが。


ここで「あれ?」と立ち止まる。
どう見ても本来の登山道らしき踏み跡が通せんぼしてあり、
誘導してある方の踏み跡はそれよりもやや薄い。
ただまあ、ここまであからさまに「通行するな」の意図が示されているのだ。
どこかで崩落かなにかがあって、迂回路を取れということだろうか。


とはいえその推定迂回路?を下りかけて、またしても立ち止まる。
わりとしっかりと作られたジグザグ道ではあるが。


明らかに本来の道とは別の支尾根を降りていくくさい。
どこか下の方で林道を横移動するとは思うが……
まあ、信じてこのまま降りる。


こちらの道も、「いや、そんなところ間違えないだろう」という薄い踏み跡にまで懇切丁寧に通せんぼがしてある。
それだけ遭難が多いのだろう。
そして対策がしてあるということはこの道が間違いではないことの裏付けでもある。


結局支尾根の方ではなく、本来の尾根側へ誘導され、この地点で作りかけの林道終点に降りた。
ここから少し西へ向かうと、


こんな場所で


こんな場所に出る。
多分ここから左手に登って行くのが本来の登山道だったのだろう。
林道の作成で迷い込む人がふえたので、本来の道を通行止めにしたのだろうか?
よくわからないな。


しばらく林道を歩く。


過剰なまでの標識とトラロープに誘導され、林道から再び山道に入る。


山道を下っていくと西山林道が見えていた。


二俣付近の小丸尾根登山口に下山。


二俣手前に何やら銅像とベンチのある場所。
この尾関某という人が山岳連盟を創設し、丹沢が国定公園になるよう働きかけたとかなんとか。
で、この場所にかつて山岳訓練所があったらしい。
今の山岳スポーツセンターの前身かな?
そういや小丸尾根の別名が訓練尾根だっけ

普通に歩けば14時半頃に大倉に着きそうな感じだが、たしか15:30に富士見の湯の送迎バスがあったはずだ。
比較的最近にできた日帰り温泉で、まだ寄ったことのない場所。
今日はそちらに入ると決め、残ったお湯で紅茶を淹れてのんびり休む。


14:57、大倉帰着

冒頭に山と高原地図のコースタイムと、守屋地図のコースタイムと、今回の私の実際にかかったタイムを並べてみた。
昼食休憩は除いたが、ミズヒ沢と銅像ベンチでの休憩時間はタイムに含んである。

こうしてみると、守屋地図のコースタイムが私の実感にとても近いのがわかる。
もとより登山地図のコースタイムというのは作成者の意図を勘案して自分ならどのくらいかを推測するものなのだが。
それにしたって山と高原地図はクセが強い。
大倉から鍋割まで4:30はずいぶんとのんびりだ。
それでいて大倉から塔ノ岳までは標高差1200mもありながら3:30の設定なんだから、どうかしてる。


バスの乗り場は長蛇の列
タクシーまで着て客待ちをしていたが。
登山口としてはバスの間隔が短いため、タクシーを使う人はあまり見かけない。
そして富士見の湯の送迎バスは早々にきていて、運転手とは別に案内の人まで立っているという力の入れよう。
ビール割引券のテッシュまでもらった。
今日はビールって気分ではないけど。


大倉から名古木の温泉まで、意外と遠い。
こじんまりとした、まだ新しい温泉だ。
今はヤビツ峠から秦野駅に帰るバスが、ここを経由するらしい。
休日で市外の人は1000円。

露天風呂から富士山が見えるらしいが、あいにくと雲の中だった。


食堂でカツ丼を頼んだら、ずいぶんとまあ洒落たカツ丼が出てきたもんだ。


カツ丼を食べて、テラスに出てみたらいくらか雲が晴れた。


富士山に、


鍋割山と南尾根
塔ノ岳と大倉尾根
三ノ塔と三ノ塔尾根
二ノ塔と二ノ塔尾根
大山とイタツミ尾根
丹沢南東部の名峰が全て重なって見える。
眺めで言えば、秦野の日帰り温泉では一番かもしれないな。
(万葉の湯はまだ入った事がないので、判断保留)


送迎バスに揺られて秦野駅に戻ると、ちょうど特急ロマンスカーが来るところだったので、特急券を買ってしまった。
新宿までの時間は快速急行と10分しか違わないが、楽なのは確かよ。

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大倉からの標高差で言えば、塔ノ岳よりも楽なはずの鍋割山。
心理的な抵抗感で遠くに感じていた。
実際に歩いてみた感想は変化に富んだコースでおもしろいものの、
あの長い西山林道の歩きはやっぱりちょっとながすぎるなあ。
また歩きたいか?と自問するに、しばらくはいいかな、と感じた。




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(2020/1/12追記)
鍋焼きうどん、私の記憶では1000円だったのだがいつのまにか1500円になっているらしい。
そして良くも悪くも「名物おやじ」だった草野さんも高齢になり、今は宿泊営業もやめて土休日のみ開けているそうな。
月並みだが時代の趨勢かな。

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