行きたい山の候補に秩父の四阿屋山(つつじ新道コース)と塩山の乾徳山がある、
と言えば通じる人には伝わるだろうか。
そう、鎖場のある山なのだが。
どちらも鎖の数は少ないし、長さもさほどでもない。
ただ傾斜が高く、鎖に体重を預けないと登るのは困難な鎖なのだ。
鎖が打ってあるといっても、誰かがその安全性を保証してくれる訳ではない。
その都度自分で確保を取り、自分でザイルの点検をするクライミングと違って、
鎖は自分が登るときに万全な状態か確認しようが無い。
無論、鎖そのものはそうそう簡単に切れたりしないし、腐食していれば「見れば分かる」。
ただ一番上のアンカー・杭が万全かは直接見ないと分からないのだ。
私がこれまで実際目にしたものでも、
・ハイマツの根本にトラロープを一まわししたものに鎖がつないである
・土の地面に鉄杭をさしたものにロープがつないである
というのがあった。
いずれも傾斜はさほどでもない場所の補助みたいなものだったが、体重をあずけて身体を地面と垂直にしていれば、鎖・ロープがすっぽぬけた時に後ろに頭から落ちていく事だったろう。
これまで鎖場を登り降りする時、極力鎖には頼らず三点支持でこなしてきた。
鎖はあくまで右手か左手で掴む三点のうちの一点としてのみ使ってきた。
とはいえボルタリングやクライミングの練習をしているわけでもなく、体重も軽いとは言えない私のこと、クライミングの能力は高くない。
どうしても鎖に頼った……つまり鎖がもし切れたとしたら、他の3点で体勢を保持できない登り方をすることも全くなかった訳ではない。
つつじ新道にしても乾徳山にしても、傾斜が高く、足がかりが少ない。
鎖にぶら下がって腕力で登る事がほぼ前提らしい。
私に登れるだろうか?あるいはそういった登山の道へ進むべきだろうか?
と、迷っている段階なのだが。
簡易ハーネス用のシュリンゲとカラビナはもう買ってきた。
シットハーネスを作る180cmのと、チェストハーネスを作る120cmのと。
シュリンゲは22kN、カラビナは8kNのちゃんとしたやつだ。
もし長い鎖場の途中で腕が痺れてしまったとしたら、カラビナを鎖にかけて、腕を休ませる事ができる。
実際そんな時に、片腕で体重を支えながら、片手でカラビナの操作などしていられるだろうか?
そんな余裕があればさっさと上り下りしたほうが良いのでは?
それだけの腕力が無い人間はぶら下がる鎖に挑んではいけないのではないか?
などといった思考が結論の出ぬまま頭の中をぐるぐると巡っている。
実は今日は、別の山を予定していたのだが。
うっかり自宅を出るべき時間を1時間誤認してしまい、バス本数の少ないところなので計画がおしゃかになってしまった。
ならばとりあえず駅から歩ける近場の山にするところ。
鎖場の事で悩んでいたので……
ある事を確認すべく伊豆ヶ岳にする。
正丸駅前の階段
じっと見ているとなんだか不安になる
9:20に出発
正丸駅から正丸峠へ向かう途中にある
「御休処」
と書かれた看板の建物。
閉まっている状態しか見たことなかったが、今日前を通りかかったら開いていた。
老夫婦が店先に何やら並べているのを覗くと、自家製のお饅頭だった。
おあいそに2つ求める。
山道の入口で支度をして、1つ食べてみる。
素朴な味わい。
デパ地下や和菓子店で売っているようなお饅頭とは比べるべくもない。
ただ素人の作るものとしてはなかなかおいしい。
いや、そんな批評家じみた事が言いたいのじゃない。
これ、子供の頃に母が作ってくれたまんじゅうに、あまりに似ていてちょっと言葉を失った。
多分素人が特段の工夫を凝らさずに、昭和の時代に出回っていた一般的なレシピ・作り方で作るとこうなる、という特徴が一緒なのだろう。
このあたりの標識に出てくる
「名栗げんきプラザ」
介護施設的なものかと思っていたが、子供のキャンプ施設みたいなものらしい。
お風呂にしても食堂にしても、外来で立ち寄り利用は出来ないみたいなので、
登山の目的地としてはちょっと弱い。
ロープ地帯
地面が濡れてないのと落ち葉に覆われているおかげで前回のように滑りやすさに悩むこと無く楽に歩けた。
とはいえ、本来ならジグザグに道を作るべきところを、ロープを張って真っ直ぐに直登させるの。
道が荒れてしまうので良くないよなあ。
二子山の隣の甲仁田山か
男坂の手前のベンチで小休止、水を一口飲む。
前の団体さんは女坂に向かったようで一安心。
さて。
今日試してみたいと思ったのは、「三点支持」で登るのではなく、鎖に体重を預けて登るということをやってみたい。
邪道として今まで忌み嫌ってきた鎖の使い方だが、つつじ新道や乾徳山に行くならそうせざるを得ない。
傾斜の緩い伊豆ヶ岳でまず練習してみようというわけだ。
一段目のここ、通常ならば岩の亀裂にのって右から左へと横移動するが。
3本ある鎖の左の鎖を両手で掴んで強引に登ってしまう。
二段目
いつもなら傾斜が緩く岩角をつかみやすい右の鎖で行くところだが。
左の鎖を両手で掴んでスタスタ登ってみる。
三段目も同様に登って振り返る。
下から二人登ってくる。
今まで避けてきた邪道な登り方をした感想は
「簡単すぎる」
三点支持で登ってたのが何だったんだと思うくらいあっけなく簡単に登れた。
それはまあ、この男坂が鎖は長い代わりに傾斜が緩く(平均40度くらい?)
鎖にぶら下がるというよりは足で立つ事ができる場所だったから。
本当に腕力だけで体重を支えねばならない、垂直に近い鎖場ではこんな簡単にはいかないだろう。
うーん。あっけなすぎて、正直これでつつじ新道に行けるかどうかの判断材料にはならないなあ。
奥多摩駅から鋸山に登る、鋸尾根の途中のあの鎖の方が練習場所としては良かったろうか?
まあともあれ先に進む
開けた岩の上からみて西側、武甲山方向
伊豆ヶ岳到着
駅から1:40か。特段急いだわけじゃないが、荷物が軽いので早かったな。
(私にしては)
元の女坂の登り口は封鎖されている
いけない。敷物座布団の類を持ってこなかった。
なんとか座れそうな岩があったのでそこに座ったが、伊豆ヶ岳でお昼にするならあったほうがいい。
魔法瓶のお湯で味噌汁をつくり、おにぎりと一緒に食べる。
おまんじゅうは、後にしよう。
上空は晴れている
現在の正規の登山ルートである中間道を歩いたことがないので。
どんなところか確認すべくここから降りてみる。
めずらしくザイルが張ってある。
と思ったら、下の方でほつれてしまっている。
中間道、という認識だったが。
元の女坂が通行禁止になり、この中間道が新しい女坂になったようだ。
五輪山の北側
昔来た時は階段が荒れてしまい、赤土の滑る斜面に難儀した記憶がある。
階段がちゃんとハマっている所をみると、手直しされたのだろう。
なぜか一番下の段が浮き出ていて、かつての状態の名残りを伝える。
正丸峠の奥村茶屋が見えてきた。
ここはジンギスカンが有名らしく、一度食べてみたいと思っていたのだが。
あいにくとちょうど昼時に来てしまい、店内が一杯。
繁盛しているということは実際おいしいのだろう。
残念だがジンギスカンは次の機会に。
ここから下山したのでは流石に楽すぎる。
旧正丸峠まで行ってたい。
こちらは広葉樹の明るい斜面
こじゃれた造りのコンクリートテーブルと
あずま屋があったので小休止
水平方向は曇っていても、上空は快晴
川越山(標識は正丸山?)
三人組が山頂から東方向の尾根を降りていくところに遭遇した。
守屋地図にもルートはない。
通行の補助のためのシュリンゲを手にしている所を見るに、道を間違えているのでなくバリエーション上等といった塩梅だが。
それにしては最後をついていく女性が見るからに歩きなれていない感じで少々不安になる。
この後は下山するまで誰にも会わなかった。
正丸山(標識は川越山)
守屋地図と標識との山名表記があべこべだが、確信があってそう記述しているような書き方だ。
誰にも会わない静かな道。
落ち葉があまり踏まれておらずガサガサと音を立てて歩く。
下っていくと、正面に登り階段が見えた。
ここが、
旧正丸峠か。
高麗川沿いの秩父往還道で、かつてはここを越えて芦ヶ久保・横瀬を通って秩父へ行ったのだろう。
旧正丸峠:もともとの山道
正丸峠:明治以降自動車の通れる道が必要となり、作り変えた新しい峠道
正丸トンネル:すれ違いすら困難な峠道に変わり、安全に早く通行できるトンネルが掘られる
どこの山にもありがちなパターンだ
誰も来ないので階段に座り、紅茶をいれる。
もうひとつのお饅頭を少しずつかじりながら、熱い紅茶をすする。
昔はあんこを使った菓子が苦手で、今もまああまり好きってわけでもないが。
こうやって食べると疲れて冷えた身体にはおいしく感じる。
一旦車道にでて、
すぐまた沢沿いへ降りていく
うん?ここを降りるの?
車道を歩いた方が楽じゃない?
とちょっと不安になる感じだが。
降りてみればそこまで酷い所でもない。
倒木多めなのと、上の車道から投げ込まれるゴミが少々目立つが。
守屋地図には「仮設橋」と書かれていたが、建築現場の足場材で作った橋のことね。
木の橋よりもむしろ安心感はある。
もう麓が近くなった頃。
右手の斜面の先に何やら建物が見える。
このオレンジ色の小さな四角は家屋として登録されている建物の印だったか。
それが3つ。
個人的に山上集落とか、山中の廃集落とかに興味を覚えるタチなもので。
ちょっと覗いてみる。
これは?
板塀だが窓が無い。
住居ではなく物置だろうか?
物置にしては立派だが。
採る人の居ないゆず
二軒目
母屋だろうか?立派なおうちだ。
見るからに廃屋だが、そこまで傷みは進んでいない。
NTTの6号保安器がついている。
つまり昭和から平成に変わる頃には、少なくともまだ人が住んでいたはずだ。
三軒目は見るからに作業小屋
三軒目の先の行き止まりにお墓があった。
きれいに保たれている所をみるに、ここに住んでいた一族はまだ近くに居て、時々来ているのだろうか。
手を合わせて闖入を詫ておいた。
母屋の前から
正面にのびる小路を下っていくとすぐに登山道に復帰した。
程なくして山道はコンクリートで舗装された道に代わり、住民の居る集落に出る。
集落を抜け、国道299号にでる。
すぐに正丸駅が見えてくる。
駅前の食堂でカレーライスを食べてから帰る。
乗り換えが面倒なので飯能から特急に乗ったが、
清瀬秋津間の人身事故で小一時間停車することとなった。
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さて、今日の練習ではあまり腹が固まった感じがしないが。
ともあれつつじ新道は近々挑んでみたいと思う。
万が一を考えると簡易ハーネスよりもヘルメットの方が必要性は高いだろうか?
大げさかな?
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