2016/08/05金~08/08月 鳳凰山
百名山の一座に数えられる鳳凰山だが、具体的に鳳凰山という名のピークは無い
南アルプス北部の、ひとつづきの尾根上に連なる森林限界を抜いた3つの山々、
地蔵岳・観音岳・薬師岳を総して鳳凰山と呼ぶ
物によっては鳳凰三山とも呼ぶが、こちらのほうがその辺の事情を汲んだ呼称だ
・交通とルート
甲府から広河原へのバスにのり、広河原に入る手前の夜叉神峠登山口でバスを降りる
夜叉神峠に登り、そこから尾根上を北へ、地蔵岳まで行ってから、青木鉱泉へ下山する
甲府から広河原へのバスは無論山岳路線で夏季のみの運行ではあるが、
実はそれ以上に韮崎~青木鉱泉のバス便が厳しい
こちらは夏季の週末中心の運行で、平日も運行するのは7月下旬からお盆までの3週間しかない
下山日を週末に設定できればよいのだが、そうでない場合、このルートを選択できる期間は非常に限られる
・テン泊縦走について
今回はじめてのテン泊装備での縦走を行う
単にテント装備で行った山ならば、奥穂高も立山も、北岳だってそうだった
だがそれらの山では野営指定地(涸沢・雷鳥平・白根御池小屋)にテントを設営したままにして、軽装備で山頂へ登って、またテントへ戻ってくるという「ベースキャンプ型」だったのだ
それらと比べて、全ての装備を背負って縦走しなければならない今回の登山は厳しいのが予想される
特に最近は以前と比べてだいぶ体力が衰えているので……
当初は深く考えずに、登山口の高い北沢峠から人の少ない早川尾根を通って地蔵岳まで来るルートを考えていたが、
トータルでの登りは多くとも、なるべく登り標高差を分散できる夜叉神峠からのコースに変更した
(前日になって急に、そのへんはひとつ前の記事を参照)
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8/5金
0705 バスタ新宿
0915 甲府駅
1000 甲府駅発広河原行きバス
1110 夜叉神峠登山口下車
~夜叉神峠小屋まで登山
前日のゴタゴタの際に、甲府駅のロッカーに入れておいた荷物を回収する
甲府駅南口のロータリーは工事中で、一部のバス停は西側の信玄公像の前に移動している
コンビニで当座の食料として
・三角サンド2つ
・おにぎり2つ
・パン3つ
を買っておく
夜叉神峠登山口にある小屋で、万札を崩すついでに昼食
かきあげ山菜そば
食べているときは気付かなかったが、汁を飲んだ後で喉ににんにくのような香りが残る
行者にんにくでも入っていたのだろうか
身支度してから出発
登山口(1380m)
キキョウの何か
時間は十分にあるのでゆっくり、ゆっくり歩く
それにしても重い
結構絞って20kg以下にしてあるつもりだが
とにかく今回は4日間の縦走なので
疲労を翌日に残すようなまねはさけたい、つまり疲れないように
ゆっくりゆっくり、休みながら登る
夜叉神峠
ここは展望は無いのだが
北へ数分で
夜叉神峠小屋(1780m)
優しげなおばちゃんが小屋番をしていた
晴れていればここから白根三山を展望できるのだが、あいにくと雲の中だ
テント場は貸し切り状態
ここは登山口から僅か1時間程度の所なので、短時間(短日数)で山に登る事を目的とした人には利用価値が低いのだろう
小屋の方には5人くらい泊まっているようだったが
見ての通りテント場はかなり広いのだが、よく使われる場所以外はクマザサに侵食されている
利用者の少なさを思わせる
静かでいいテント場なのだが
そうそう、ネガティブポイントがもう一つあった
水場がない
いや、夜叉神峠から西登山口へ下ればあることはある
往復30分かかるが……
水は小屋で分けてもらえるが、遠慮無くがぶ飲みはできない
テント場の周りを散策したら、こんな祠が
夕食はサンドイッチ2つとおにぎり1つで簡単にすませ、早々に寝る
夜間、鹿がテントの周りをうろついていた
人の少ないテント場ならではだ
夜間トイレに起きると満点の星空に圧倒される
あいにくの手持ちのコンデジは、シャッタースピードが最長でも1秒にしかならないので、星は撮れない
以前使っていたコンデジは最長30秒までいけたのだけどな
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8/6日
夜叉神峠小屋~南御室小屋
コースタイム4:30/想定6:00
朝、小屋の前から白峰三山が見える
右から北岳・間ノ岳・農鳥岳
朝食は、食欲がなかったのでおにぎり1つ
テントを撤収し、7時頃出発
杖立峠
ここまでは順調にこれた
ゆっくり登ってはいるのだが、2日目は登りの標高差が大きい
どうしても疲れが出てくる
火事場跡
ここらへんで完全にバテてしまった
食欲が無いからと食事をあまり取らなかったのもいけなかったろうか
歩いてもすぐに脚が重くなり立ち止まる
休んでから歩き出してもすぐに脚が重くなる
荷物をおろして小休止しても同じ
完全にバテに入ってしまった
リンドウのつぼみ
バテて体が重い
つらくてたまらないが、少しづつでも前に進む
どうにか、こうにか、
2日目の最高点・苺平に到着(2515m)
ここから南御室へはほぼ平坦に近い下り
南御室小屋到着(2460m)
あまりに息を切らせていたので、小屋のオヤジに笑われてしまった
冷えたビールはあるけれど
肝臓への負担を考えて控えておく
テント場
13時過ぎだというのにもう結構な数がはられている
テント場の奥はシラビソの森になっている
湧き水を引いた水場
冷たくてウマイ!
相変わらず食欲は無いけれど、食べないと明日も同じことになる
遅めの昼飯として残りのパンを食べ
夕食としてインスタントラーメン(+サラミソーセージ)と野菜スープを摂る
夕方になってから、高校生の山岳部のグループがやってきて、
テント場がまあ、うるさいの
でも19時を過ぎたらパタリと静かになったので、そのへんは顧問の指導が行き届いているようで
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8/7日
南御室小屋~砂払岳~薬師岳~観音岳~赤抜沢ノ頭~地蔵小屋
コースタイム4:15/想定6:00
4時頃から高校生グループが準備しだして目が覚める
こちらはのんびりなので気にせず二度寝
テント場に朝日が差してきたので、フライを裏返して少しでも乾かす
濡れたテントはそれだけ重くなるから
ベースキャンプ登山ならそんな気苦労は無いのだけど
朝食にラーメンと野菜スープを食べ、6:45頃出発
いきなり急登
巨岩地帯を抜け
樹木がナナカマドに変わり
突如、ハイマツの森が切れるとそこは
3日目にしてようやく森林限界を抜けた
砂払岳の南側
これから行く手に薬師岳と観音岳が見える
北岳・間ノ岳・農鳥岳もよく見える
後ろを振り返ると、登ってきた森の入口と、その上に、
富士山
砂払岳の頂上へ登ります
息を切らせながら必死に登っていると
岩と砂しかない、こんな場所で懸命に小さな花を咲かせているのを見て言葉も無いくらいに美しいと思う
その反動なのか、私は派手派手しい色の花をプランターに植えて並べているのを見ても、なんとも感じないタチなのだ
砂ザレの急斜面を登り
岩をよじ登り
このへんが砂払岳の一番高いピーク
ただここには何も標識は無い
次の薬師岳と観音岳
下を見下ろすと、岩の脇に赤い屋根が見える
あれが薬師小屋か
岩場の下りは慎重に
砂払岳と薬師岳の鞍部は森のなかになっている
その森の中に薬師小屋
こじんまりした小屋です
再びハイマツのトンネルを登り
砂ザレを登る
後ろを振り返ると砂払岳の全容が見える
なかなかどうして、立派な山だった
薬師岳頂上(2780m)
広々として風も弱く陽射しは温かい
多くの人がくつろいでいる
”日本百名山”を頑なに認めない、山梨百名山の標識
北を見ると妙にとんんがった……
八ヶ岳か、あれは
薬師岳にも小さなオベリスクがあります
十分に休んでから出発
でもやっぱり副食類はあまり喉を通らないな
雲のあいまに中央アルプスが見える
北岳の大樺沢が見える
右側の黄緑色の縦筋が、昨年私が登った草すべり
観音岳手前
龍の鱗のような岩が並ぶ
到着
観音岳頂上(2840m)
今回の旅の最高地点
山頂は狭く、後から登ってくる人に譲ってさっさと降りる
山頂北側の肩
右が地蔵岳
中央が次の目標の赤抜沢ノ頭
左が高嶺
早川尾根から来るならば、あの高嶺が最高点になるはずだった
正直言うと、高嶺で花の写真の一つも撮りたかったのだが
ズームで
地蔵岳のオベリスク
登ろうとしている人が居るね
来し方を振り返る
富士山がチラリと見えた
さて、観音岳から結構くだる
鳳凰小屋分岐
標識にある地蔵岳山頂とは、多分赤抜沢ノ頭の事を言っているのだろう
疲れが出てしまって小休止を取る
ここから
最後の登りである赤抜沢ノ頭まで、標高差100m
そのぐらい頑張れるだろう、という気持ちもあるが、
体の疲れと近道の誘惑には勝てず、ここから鳳凰小屋へ降りるとする
赤抜沢ノ頭まで登ったところで、地蔵岳そのものには登ることができず、写真に取るだけなのだし
ところがこの近道がまた酷く荒れた急降下の道で
降りている内に脚にクル
ようやく森を抜け、小屋が見える
真下の沢でグループが涼んでいる
けどどうやって降りるの?という程荒れた急斜面
キョロキョロと見回すと近くにハシゴが掛けてあった
鳳凰小屋のテント場はまっ平らに整地されていて凹凸がほぼない
寝心地良いです
テントにねころび、陽射しと風とをうけてまどろむ
テント泊で一番気持ちのいい時だ
夕食
味噌ラーメン+野菜スープ+スモークチキンをまとめて
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8/8月
鳳凰小屋(2400m)~御座石温泉(1080m)
当初の予定では青木鉱泉に降りる予定だった
小さい温泉宿だが、歴史ある見事な建物らしい
だが来る途中で休業している事を小耳にはさみ、鳳凰小屋の人に聞いても同じだというので、
御座石温泉に降りることにする
やはり風呂には入りたい
朝食にラーメン
沢の対岸が昨日降りてきたルート
荒れているのが分かるだろうか
昨日使ったハシゴ
御座石温泉へのコースは、最初緩やかな尾根通しで、最後のほうが急降下になる
それも嫌で青木鉱泉を考えていたのだが
右手に朝富士
左手に八ヶ岳が見える
八ヶ岳の右手
長野と埼玉、長野と群馬との県境の山々
今まで地蔵岳に隠れて見えなかった甲斐駒ケ岳も見えてきた
右の蓼科と左の霧ヶ峰の間の、さら向こうにも山並みが見える
あれはどこの山だろうか
奥秩父の山々
シルエットからは特定しがたい
一昨年登った金峰山もあるはずだ
八ヶ岳と奥秩父の間
清里の方は本当に高いところにある
手前の北杜市から見るとあきらかに「一段高い」
岩山と岩山との渡りの部分
桟道が崩落してるじゃないか
滑りやすい砂の斜面をおっかなびっくり、降りてきた
しかしこうして左手に八ヶ岳を見ながら歩くのは、飽きなくて良いが
麓が見えるともうすぐにでも下山できそうな錯覚を起こす
普段登っている関東の低山とはスケールそのものが違うんだよなぁ
急に広いクマザサの原っぱに出る
ああ、ここが
燕頭山
ここからがくだりの本番(あと標高差1000mをくだらないといけない)
急降下になるので脚を傷めないようにしないと
軽くするため水は1.5Lだけ残してあとは捨ててしまう
休憩してから歩き出すとすぐに、予想外にしっかりした山頂標識がある
また70過ぎと思しき高齢男性とすれ違う
よく登ってくるもんだ
道が崩落して、立っての歩行が難儀な箇所がいくつもある
どうして木段、ハシゴ類で登山道を保全しないのだろうと思っていたが
よくよく見るとそれらの残滓らしきものはある
ずっと昔に作って、保全されていないのだ
これは、もっとも原型をとどめていたハシゴ
薬師岳が東に伸びる「中道」という尾根の、最後のあたりに道が見える
あのあたりが青木鉱泉だろうか
写真右上の白い雲に覆われているのが甲府盆地
まだ白い花をつけているバイケイソウがあった
マルバダケブキも
この2つは枯れた後が見苦しくてねえ
突如、林道終点に出る
地図には林道などなかったはずだが……
ともあれここが西の平分岐
間違って林道を進まないよう、がっちりガードされている
長い降りで脚がガクガクになっているのに、そこから登りはかんべんして欲しい
急にハシゴや階段が出てきて、不審に思っていると
大規模な治山工事を行った、へりの部分が登山道なのか
ようやく、ようやくにて御座石温泉の裏手に出た
11時頃の到着
バスの切符を買い、お風呂を使わせてもらう
次のバスが12:30なので、お座敷でビールを
ここ数年で一番旨いビールだった
新聞は昨日の
「古さ」も含めて、なんとも田舎家の居心地の良さだった
温泉の前で待っていると、先に青木鉱泉の登山者を拾ったマイクロバスがやってきた
ここから乗ったのは5名だが、なんとか全員座れた
韮崎駅ホームから
左の八ヶ岳と、右の「ニセ八ツ」こと茅ケ岳
さすがに疲れたので、甲府から特急を使って帰った
おまけ
韮崎駅ホームからみたとんかつ屋さん
看板に「とんかつ・お食事・無尽会・小宴会」とある
無尽or無尽会というのは山梨に独特の風習で、「講」のようなものらしい
皆で定期的にお金を積み立てて、入用の者が出た時に、そこから融資するのだという民間金融
今はお金のやり取りは無くなって、単なる集まり・飲み会にその名が残っているのだという
一人で複数の無尽に所属するのが当たり前だという
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今回の反省点は食料
軽量化に努めないといけない縦走なのにだいぶ余らせてしまった
私はつかれると途端に食欲が失せる体質なのだが、かと言って食べないことには体力が持たない
特に2日目の後半はひどいシャリバテに見舞われた
一泊くらいの山行ならばなんとかなるのだけど
とにかく疲れてしまうと食べ物が喉を通らなくて
特にカロリーメイトのようなぼそぼそしたものは口が受け付けない
だからこそ、料理して温かい、水分も塩分も取れるインスタントラーメンを持って行ったのだが
多少は無理してでも食べないと駄目だ
・今回の持参食料
インスタントラーメン10食 →6食のこり
インスタント野菜スープ5食 →2食のこり
柿の種1袋 →手付かず
チョコレート1箱(150g) →9割程度のこり
チーカマ1袋(5本) →完食
パインアメ1袋 →手付かず
サラミソーセージ1本 →ラーメンに入れて食べた
スモークチキン1本 →ラーメンに入れて食べた
・初日に甲府駅のコンビニで買った食料
サンドイッチ2つ →1日目の夕食
おにぎり1つ →1日目の夕食
おにぎり1つ →2日目の朝食
パン1つ →2日目の行動食として
パン2つ →2日目のテント場到着後に