2019年12月30日月曜日

2019/12/15日 里山迷走@成木尾根

0600 池袋 準急飯能行
0655 飯能 471円
0706 飯能駅
0744 間野黒指 451円

結構前になるが。
個人の方のHPで「都県境を歩く」というテーマの山歩きを見たことがある。
市街地は別として、東京都と接する三県との境界を歩くというものだった。

すなわち、青梅と飯能の境の安楽寺から成木尾根を登り、小沢峠・権次入峠・長沢背稜を経て雲取山までが東京と埼玉の境。

雲取山から七ツ石山の東の肩まで石尾根を下り、小袖川を下る。
奥多摩湖上はさすがに飛ばすが大山寺の北尾根南尾根を経由してシンナシ尾根で三頭山に登る。
笹尾根をずーっと下って三国山までが東京と山梨の境。

三国山から和田峠を経由して陣馬・景信・小仏城山、城山から大垂水峠を経て南高尾山稜。
草戸山から東へ、町田市の相原へ下るまでが東京と神奈川の境。

地味なんだか壮大なんだかよくわからない山歩きだが、とりあえず小袖川の遡行が素人にはとてもムリであることは確かだ。
それ以外にもいくつか難所があってそのHPでは詳しく解説していたが、その中の一つ興味を惹かれるものがあった。
東京都青梅と埼玉県飯能市の境に、一か所不自然な境界が引かれている場所がある。




それがここ。
普通なら国境となる山脈の主脈上に境界線が引かれるはずなのに。
ぐぐっと北側へ支尾根沿いにせり出し、複数の支尾根を横断するように都県境が引かれている。
いかにも不自然だ。
本来の主脈のあったであろう場所に、赤線を引いてみた。
すると南・東京側の採石場が主脈を越境して採石していることが分かる。
おそらくこの採石事業が不自然な都県境の引かれ方と無関係ではあるまい。

このおかげで、都県境上を忠実に辿ろうとするとそこそこの難所らしい。
小袖川には遠く及ばないだろうが。
私はといえば、この都県境上ではなく、採石場の”へり”の部分を通過できないだろうか、と思っている。
天気もいいし、時期的にも紅葉が終わり里山歩きに向いた頃だ。
ここを試してみようと思う。


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早朝の飯能駅を北口にでると、観光かなんかの腕章をつけたおじさんが「どこへ行くのか」の聞き取りをしていた。
ただ「まのくろざすにいきます」と告げてもどこの事か分からない風だった。
バス停にはそれなりに人が並んでいるように見えたが、すべて名栗・名郷方面のバスを待つ人だった。
間野黒指行のバスに並んだのは私ひとりだけ。
二年前に行ったときも同様だった。(※)
マイナーな所なのだろう。

(※)
2017/12/29金 成木尾根
https://yamatabinokiroku.blogspot.com/2017/12/20171229.html




 真野黒指バス停で降り、まずは細田の山上集落へ向かう。


 細田は山上集落とはいえ、現在も人が住む集落故、当然舗装された車道(林道だけど)が通じている。

 右の山道を行けば近道だが……
気が変わった。左の林道を行き、途中のカーブから山に入ろう。
冒頭に述べた都県境のことが頭にあって、これまでに歩いた場所と「つなげて歩く」ことが念頭にあり、2年前と同様にいぼとり地蔵~大仁田山経由で都県境にあがるつもりだったが。
今日行く場所はひょっとしたら結構な難所かもしれない。
時間と体力をセーブしたくなった。
それと雉撃ちしたくなったので、早く山に入りたい。


 崩れやすく・分岐不明瞭な場所もある山道をあがっていく。


 都県境の尾根にあがった。



 成木尾根、要所要所に標識の類はあるといえばある


 東へ


 おっと、そうだ。
この辺はまだかろうじて守屋地図のカバーしている所だったな。



 紅葉は終わりごろ


 いろいろある標識の中で、一番素性の確かな標識がこの青梅の消防の設置したものだろうか。
でかいわりに読み取れる情報はないが、少なくとも道は外していないことの確認にはなる。




 無名ピーク


 左に誘導されるが、北側へ降りていくように見える。
直観でまっすぐ行ってみる。


 だが地面が明らかに柔らかく変わり、


 行き止まり。


 なるほど。
さっきの所を左に屈曲するので良かったのね。

この成木尾根、小沢峠から採石場西側まで、こんな感じに分岐の分かりにくいところがとても多い。
小さなアップダウンを繰り返すたびに、小ピークからの下りの踏み跡が分かれていて。
それでいて見通しのない樹林帯の尾根であるため、周囲の風景と地形図とを照らし合わせても現在地が判別しにくい。
風景が見えず、現在地が分からなければコンパスも役に立たない。
まあ、GPSを頼るのが良いと思う。多少自信があってもね。


 さっきの分岐を左に下っていくと鞍部にでる。


 ここが栂のもと


 東へ登って



 次の小ピークがトヤハケ





守屋地図を頼れるのはここまで。



 サルノキシカケがたくさん生えた木



 太い尾根が緩い登りに差し掛かった所で、
うん?
とひっかかる。


 倒木に腰を下ろして休憩。
地図を確認する。


 そうだ、ここだ。
都県境を忠実に辿るなら、ここを尾根沿いに東北へ進むが。
「本来の主脈上、採石場の方」へ向かうなら尾根を外して東へ向かうところだ。


 休憩をおえて立ち上がる。
ペンキで左へ誘導されているが、右へ。



 踏み跡も案内もある。



 村尾組……例の採石場の事業者だ


 採石場の西側
採石場は迂回するようにと標識があるが、


 その迂回の道には台風による倒木で通行止めとある。
どうしろと?
いや、もとよりそれに従うつもりではなかったのだけど。



 そろりそろりと採石場へ向かう。


 ふむ。
日曜日ゆえ、人の気配はない。


 採石場の中へと降りていく。


 重機が目に入り、足をとめる。が、はやり人けはない。


 左手。削り取った山との境界部。
登って行けなくもないように見える。


 もう少し進んで、ショベルカーの裏から。
正面に見える、段段に削り取られている場所の上が333ピークだろう。
あそこの上が、採石場東側の山道の途切れている場所だ。
あそこまで行ければ、山道に復帰できるはず。
さて。
ぱっと見て2つルートがありそうだ。

1つ。
中央やや右手に工事車両が何台も並べて停めてある場所まで降りていき、
333ピークの右手のなだらかそうな斜面、森との境界のあたりを登っていく方法。
比較的楽に採石場東側へ渡れそうだが……
いうまでもなく私有地に立ち入るわけで(いや、既に立ち入っているが)
今は人けはないが、麓の事務所の方には誰かがいて、何かの折にあがってくるかもしれない。
そうしたら怒られるだろうな。
いや、私一人がゴメンナサイと頭を下げるのは構わないが、ハイカーの評判を下げるような事はできたら避けたい。

2つ。
当初の目論見通り、北側の採石場と森との境界上を進む。
これならだれかに見とがめられる心配はない。
しかし途中に深めの谷を挟んでいる。
果たして通行できるだろうか?

ウーム、と悩んでいると。
左手の森との境界の方からカランカランと熊鈴の音が聞こえてくるではないか。
こんな場所を私以外に歩く人がいるとは驚きだが、まあ日曜日だし居てもおかしくはない。
それよりも、誰かが歩いてこちらに向かってきているというのはそこが歩ける場所だという証拠。
よし、左手へ向かってみよう。


 採石場のへりの土の斜面を崩さないように慎重に登る。
正面にすすきの藪。
踏み跡、というか。地面近くに獣が通行したような穴がある。
ここを進もうとしたが、穴の上のススキが固く絡まっていて藪漕ぎできない。
右手は崖だ。
左手……森の中の斜面を迂回するしかないな。

そちらに踏み跡はなく、倒木や枝のなかを這う様に進む。
この時枯葉や植物の為が襟から服の中にたくさん入ってしまった。
ともあれススキ藪を迂回できてほっと一息ついていると、例の熊鈴の音が間近に近づいてきた。
「やあこんにちは。こっちはひどいススキの藪ですよ。この先の道はどんな具合です?」
と、そんなことを話そうと思っていると。
黒犬が飛び出してきた。
え!?
熊鈴は黒犬の首輪から鳴っていた。
すぐ後ろを飼い主がついてくるのかと思ったが、だれもいない。

黒犬は私を一瞥もせずに通り過ぎて行った。
なん、なの?
野良犬には見えない。
というかここは青梅市で東京だ。今時野良犬が放置されているとは思えない。
では飼い犬?放し飼いで?
いや、そんなことより。
歩いてきたのが人でなく犬ということは、この先が歩いて通行できるという保証にはならなくなったな。


 まあ、ひとまず行ってみよう。



 踏み跡もテープもある。



 が、その踏み跡とテープに従っていると北へ下っていくではないか。
とはいえ東に直進できる地形でもない。
いったん従う。


 踏み跡はだいぶ怪しくなったが、テープはある。


 底にまで降りていくと、意外にもしっかりした踏み跡の山道がある。


 ここ。この右手の斜面をを降りてきた。
踏み跡は正面の沢沿いに南へ向かっている。


 地形図から察するに。
多分採石場西側の「迂回路」の標識に従っていれば、沢筋にここまで降りてくるのだろう。
つまり無駄足をした。


 上を全部脱ぎ、枯葉や種をはたき落とす。
ポカリを飲んで小休止してから再出発。
まずは沢沿いに南へ進むが、


 すぐ東の斜面に取り付き、ジグザグに尾根を登る。


 尾根上にのって、尾根筋を南へ。


 無名ピーク。
輪切りにした木が椅子かわりにちょうどいい。


 ここまでくれば、次の333ピークまですぐだろう。
その先の破線の途切れているとこまでもすぐだろうし、
ならば安楽寺まであとは消化試合だな。

と、そんなことを考えていた。



 おかしい。

 再び採石場の中に降りていくぞ?
いや、踏み跡のないススキ藪でこれはどうみてもルートじゃない。

いったん尾根上に登り返してどうしたものかな?と地図とにらめっこしていると。
カランカラン
と例の熊鈴の音が西からせまってくる。
今度は用心して待ち構える。





 痩せた黒犬だ。
熊鈴のついた、オレンジの首輪が二つ?
私に襲い掛かってくる様子はない。


 私の近くでキョロキョロと何かを探している風だが


 うん?なんだろうこれ。
一つの首輪には金属のプレートが、飼い主の情報だろうか?
もう一つの首輪には奇妙なふくらみと、ワイヤーが30cm程の長さでぶった切られている。
どこかから脱走してきた迷い犬だろうか?
そうこうしているうちに黒犬はまた西へと走り去った。


それがこの場所。
うん、地形図の「崖」の表示と現在の採石場の採石している境界とにだいぶ相違があるな。当たり前だが。


まあともあれここを降りていくのはなしだ。


無名ピークの近くまで引き返すと、あった。
北への降りていく踏み跡が。


それがここ。


こっちもまた……随分と妙な方向に高度を下げていく。


踏み跡も徐々に薄くなり、最後の方は何もない斜面を降りていく。


二回目の谷底。
しかしこちらには道も標識もない。


ただこの村尾組の看板だけがある。
入ってはいけないというが、進む道も引き返す道もないぞ。


地形図を見る。
ここから南へ、破線のルート上に復帰するには。
尾根沿いか沢沿いかはわからんが、全体的な傾斜はなだらかだ。
歩ける場所を探しながら行けば……行けないこともないだろう、と判断。
沢沿いは倒木が塞いでいる。
「この辺だな」
とあたりをつけて東の斜面を登ってみる。


するとテープが出てきた。
上の方に目をこらすと次のテープも見える。
よし、いいぞ。



柔らかい土の斜面だが、手も使えば登っていくことはできる。
もう少しで尾根上にでる。


尾根上にあがれた。やれやれ。
と、この標識が目に入る。
え?
え~?
今私が這い上がってきた斜面、それが正解だって言うの?マジで?



まあ尾根筋にはあがれたんだ。南へ向かおう。


はい、主脈上に復帰。


ここが採石場の東のへり。
いや、正確にはもうちょっと西へ進めるか。




色々と標識はあるんだけどさ。肝心な場所では無いよね。


東へ、やや薄いとはいえ尋常の山道だ。



はい。現在の都県境に復帰。


来た道を振り返ればこんな警告が。




しばらく行くと、左手にゴルフ場が。


飯能パークCCね。
人の姿は見えないが、プレーしている人の気配はする。







鉄塔。



いつもの。


そうですか。


今度は右手に墓地が見えてくる。



木々のあいまから見える風景が、ゴールが近いことを告げている。


裏山、といった感じの場所から


左手の農道だか林道だかに飛び出す。


振り返る。
ここが入口か。
「成木尾根ハイキングコース」の標識が朽ちて、警告の看板があたらしい。



正面に見えるのは南高麗小学校か。


帰りは飯能行のバスと、青梅行のバスと、どっちになるかな?
安楽寺を出発場所に検索すると、青梅側の都バスをサジェストされる。
「成木一丁目自治会館前」のバス停が最寄だったはずだが、一つ西側の「中里橋」バス停を指定される。
何か理由があるかもしれないし、そっちへ行ってみよう。


安楽寺。
なかなか立派なお寺そうだ。
参拝している時間はないのでバス停へ向かう。


中里橋バス停。
次のバスまで8分。
ちょうどいい。


服の中の枯葉などをはたき落とす。
やれやれ、早く湯につかりたい。


東青梅から電車にのり一駅。河辺で降りる。
東急が閉店してイオンになってる。


梅の湯でじっくり湯につかってきました。
もうこんなに昏く。
冬至が近いのだな。


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追記1
採石場の迂回ルートについて。

まずもって現在の成木尾根の採石場分断箇所には「登山道」「ハイキングコース」と呼べるような山道は存在しない。
北側を迂回する事は可能だが、踏み跡は薄く、ある程度地形図を読みルートファインディングできる能力は要る。
初心者にはおすすめできない。
ぶっちゃけ採石場の中を突っ切ってしまうのが早い……
自己責任とも言い難いので推奨はできないが。


追記2
黒犬について。
ツイッターに画像をあげたところ、想定外だったが迷い犬捜索クラスタ?に拡散された。
その中で「これは猟犬なのでは?あの首輪の膨らみは発振器だ。」という声があった。

青梅の猟友会に写真と遭遇場所をメールしたところ、その日の夜には返答があった。
あの犬は迷い犬ではなく、その日まさに猟師が猟をしていたそうな。
切れたワイヤーに見えたものは発振器のアンテナだそうで。
たまたま猟師に会わなかっただけで、結果的には取り越し苦労だった。