2023年10月9日月曜日

2023/10/8(日) 鳥海山(新山山頂5m手前で撤退)

 鳥海山に登るに至った経緯や、計画については2つ前の記事を参照のこと。
細かい感想や反省点は最後にまとめます。



東西線の竹橋駅。
土曜の遅い時間の都心の地下鉄駅にはおよそ不釣り合いな格好の人がちらほら。
もちろん私もその一人だが。

パレスサイドビル・毎日新聞社のロビー。
全国紙の新聞社とは思えない難民キャンプのようなありさま。
コンビニや飯屋は揃っているので、早めにきて時間を潰すのも可能。
バスタ新宿などと異なり、ほとんどのアルペン号は22:30出発に集中している。
22:10ごろから、各方面ごとに受付が始まり、皇居前の通りに並んだバスへ案内される。

竹橋を出発したバスにはトイレは無い。
途中途中でSAなどに寄る。
私はまったく降りなかったが、たしか行きは
 上河内SA・安達太良SA・山形蔵王PA・道の駅鳥海ふらっと
だったかな?

6:42頃、鉾立登山口に到着。
軽い小雨。

天気予報を見る限りでは荒れることはなさそうだ。

ただ気温は思った以上に低い。
防寒もかねてカッパの上下を着こむ。
サンダル履きで来ていたので、靴を出したりとかで身支度に多少時間を要す。


7:01、鉾立口を出発


すぐ上の展望台までは舗装された階段になっている。

展望台。
もう小雨はやんだ。

展望台から北側、秋田県のにかほ市方面。

展望台から南側、山形県の遊佐町方面。



石畳の敷かれた道を行く。
登山口からもう樹林帯が無く、展望がいい。
毎日アルペン号で来ている我々の他、マイカー登山者もいて、登山者は多い。
しばし行列で抜いたり抜かれたりだが、1時間も歩いていると歩く速度ごとに適度にばらけてくる。





なだらかでたおやかで、それでいて山の異界感もあってすばらしい山だ。
天候がいまいちなのが残念。



御浜神社・御浜小屋に到着。
営業期間外のはずだが、なぜか屋外設置の発動機は動いていた。


ニュースで見た通り、鳥海湖の水は少ない。
それでも昨日は降ったようで、登山道は水にぬれていた。


もう降らないだろうと思って、カッパの下を脱ぐ。
風が冷たいので、体温を奪われないよう上は着たまま。

今日は長丁場が予想される。
ペースの維持&スタミナ温存の為かなりゆっくり歩いたが。
ここまでコースタイム2:00の所、1:25で来た。
後でまとめるがコースタイムは甘めの設定のようだ。




扇子森・御田ケ原は緩やかなアップダウンのある尾根上を行く。





七五三掛分岐。
登りは最短の千蛇谷を行く。


千蛇谷へ降りると向こうに山頂が見えてくる。
今年の猛暑で鳥海山の雪渓が消滅した、というニュースを見たのが9月末の事。
ここ数日で急に冷え込んできたとしても、降っても薄化粧くらいだろうと思っていたが。
なんだか割と白いな?



千蛇谷は谷底よりも右岸側に道がある。
いわゆる普通の山道レベルで歩きにくい所はない。


どうも昨日の雨が、山頂では雪だったらしい。
まだ新雪で凍結もしていない。
陽にさらされてぐずぐずの状態。
降りてからニュースを見たが、本日が鳥海山の初冠雪の日だったようだ。


だが千蛇谷を詰めていくと徐々に積雪も厚くなってきて、周りの人も足を取られて難儀しだす。
スリップが致命になるような場所でもないのだが。



2000mを越えたあたりで、念のため持ってきた4本爪を装着。
ただまだ柔らかい新雪なのであまり爪は利かない。




頂上御室小屋に到着。
気温は上がってきたが、相変わらず風はあり、雪山の様相だ。


予想以上に雪があり、新山山頂へやや不安がある。
とはいえここまでコースタイム4:40の所、積雪でペースダウンしてなお3:40で来れている。
時間はかなり余裕がある。
山頂へアタックしてそのまま時計回りに外輪山コースで降りられないか、行ってみよう。


たぶん、雪さえなければどうという程のものでもない岩場なんだろうが。
足をかけるべき岩や、足を置いてはいけない岩の隙間などが積雪で見えにくい。
少し嫌な場所もある。
スマホを出して写真を撮る余裕のない場所もいくつかあり、
写真を撮る余裕のある場所だけしか残せないのでアレだが。
ちょっとヒヤリとする場面も数度。


そして新山山頂まで行く人が結構いて。
いわゆる岩場渋滞が発生、ゆっくりとしか進めない。



岩の割れた隙間のとこ。
ここは積雪が厚く、4本爪では止まれない。
尻を地面につけたりしながら慎重に行く。

この先の崖になっている所で、目の前の人が滑落する事故も発生。
幸い数mで止まれて、怪我も無く復帰できたようだが。

その先でまた渋滞。
だが今度の渋滞は5分程待っても全然進まない。
列の前の方に「何か渋滞するような難所でもあるのですか」と声をかけてみたら。
「もうすぐそこが山頂なんだけど人がいっぱいで、今いる人が降りてこないと登れない」とのこと。
なんだそりゃ。
すれ違いも難儀するような所に行列が出てきているっていうのに、さっさと降りてこないで山頂でくつろいでいるというのか。
マナーの悪さで取りざたされる富士山ですら、剣ヶ峰の標識の所は写真を撮ったらすぐに譲るというのに。


もう5分も待っていると、山頂の団体さんがようやく降りて列が進んだ。
私も山頂まであと5m程度のとこまで来たが。
そこでまた山頂がいっぱいになったようで、まだ少し待つようだ。
うーん。
なんだか馬鹿らしくなってしまい、ここでいいやと引き返すことにした。
百名山まできてピークを踏めないのもなんだが、まあ、私はピークハントにそこまでこだわっている訳でもないので。


慎重に頂上御室小屋まで降りてきた。
新雪と岩場のミックスだと4本爪の軽アイゼンではほぼ役に立たないな。
装着するなら6本爪が欲しい。
チェーンスパイクの人と、何も着けてない人とが1:2くらいの割合だったろうか。
私はオールドスクールな4本爪が好みなのだが……鳥海山に関してはチェーンの方がいいかな?と思ってもいたのだ。
ただ荷づくりをしている際に思ったより重くなってしまい。
軽量化のためにチェーンを4本爪に替えた事を少しだけ後悔した。

ちなみに荷物が重い最大の原因は水4L。
8時間行動で4Lと夏基準で持ってきたが。
全然喉が渇かず、結果から言えば1.5Lで足りた。


山頂経由で外輪山の方に行けなかったので、下りも千蛇谷へ。
いいや、早いとこ鉾立口に戻って酒のもう。


くだればすぐに雪がなくなる。
気温も上がって融けたようだ。


とはいえ休憩なしで来たので、そろそろ足が疲れてきた。
千蛇谷からの登りかえしが少ししんどい。


七五三掛から

御田ケ原分岐から

御浜小屋が見えてくると、秋田側が雲の隙間に見える。
象潟の街だろうか。
写真では見えないだろうが、にかほ市はやけに風力発電の風車が多いな。

鳥海湖。


さすがに脚がくたびれた。
御浜小屋の適当な岩に腰をおろして、山頂で飲むはずだったコーヒーを飲む。
南の山形側からは雲が山肌を登ってきて、展望は無し。


御浜小屋を過ぎ、

鉾立口と大平口の分岐を過ぎ、

象潟の街を見たり、

雲の下に出たようで、遊佐の方もみえた。

鉾立登山口が見えた。
右手前のちょっと離れた建物はというと、

TDKの東雲荘という山小屋。
営業はしていないようだが。



15:02、鉾立口に戻ってきた。


バスの中の座席に温泉後の着替えとサンダルを置いてきた。
履き替えたかったが、時間が早すぎてまだ乗務員の人が来ていない。
先に稲倉山荘で一杯やろう。
ここは山荘とはつくが、レストラン&お土産の営業のみ。
宿泊するなら向かいの鉾立山荘になるのだろうか。


象潟ルートで登ってきた訳だからして。
当然飲むのは象潟の酒と銘打ったこの冷酒。
見覚えのある四角い瓶……雪の茅舎の酒か。
それなら由利本荘だな。まあ、近くだしOKOK。
どえらい辛口で、冷酒なのに疲れた体に火が灯るようだ。
つまみは焼たんぽと玉こんにゃく。
玉こんにゃくは山形の方の食文化だっけ?
まあ鉾立口自体が秋田とはいえ県境に近い訳だし、OKよ。
もう少し食べたかったが、温泉後のお楽しみにお腹をとっておく。


ビジターセンターの横に立つと、日本海の沖合に随分と平たい島が見える。
あれが飛島だろうか。

北側の方に見えた、ぱっと見島のようなあれは男鹿半島の先端部か。

そうこうしているうちにバスが開いたので荷物を片付けて乗り込む。


30分程下ってあぽん西浜でお風呂。

の前に、隣のとりみ亭という食事処で飯にしたかったのだが。
何という事か、今日はもう醤油ラーメンしかできないという。
ここは土地の食材や独創性のあるメニューがあって楽しみにしていたのに。
こんなことなら稲倉山荘でおいしそうなものを食べとくんだった。
それならいいや、酒だけなら温泉の方にもあるだろうしと入浴へ向かう。
泉質はまあ、そこまででも無かったが。
地元の人が多く、お国の言葉を聞きながら浸かる湯もまた一興。

ここで再びのガーン。
ここあぽん西浜はお酒を置いてない。
一応JR吹浦駅から600m程の立地ではあるが、観光客が入るような温泉ではなく、地元の人が車で入りに来る場所のようなのだ。
(観光客とかは隣のホテルに泊まり、ホテルの湯に入るだろうから)
せめてもの抵抗で地元のお菓子とジュースを飲む。


20時に温泉を出発し、帰りは、
 寒河江SA
 那須高原SA
 蓮田SA
で休憩をはさむ。
あんまり腹が減ったので、那須高原SAでラーメンをすすった。


4:25頃、東京駅の丸の内側にバスが到着。

気分的には神田か御徒町あたりの24時間営業店で一杯やっていきたいとこだけど。
あいにくと今日は9時からお仕事。
悲しいね。
リモの日なのが救い。
帰宅して9時前まで寝ていた。
丸一日半ぶりの布団がきもちい。
9時前に目覚ましで起きたとき、脳と内臓が「もっと寝ていたい」と主張するのをなだめる。
なるほど、前夜行&日帰り登山&後夜行 の場合、最終日は休息日にする必要があるな。
今日の月曜日は祝日だから、今週は例外で土曜の夜発のアルペン号が設定されていたのだろう。

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それでは今回の鳥海山のまとめ・反省など。

■鳥海山 象潟ルート~千蛇谷経由 の難易度
これはわりと段差がある、と感じた。
・鉾立口~御浜小屋:舗装路か石畳でとても歩きやすい。
・御浜小屋~七五三掛分岐:アップダウンはあるが、なだらかで歩きやすい。
・千蛇谷:谷底のガレと、登り傾斜、道の状態はまあ、普通の登山道レベル。
・頂上御室~新山山頂:両手も使って支持する必要も出てくる岩場。雪さえなければまあ、そこまで難しくも無いと思う。
雪があると難しくなる。
鳥海山の山小屋と乗合タクシーの営業期間が短い理由の一つだろうか。

■コースタイムについて
山と高原地図の2023年版だと、鉾立口~千蛇谷経由 のコースタイムは
・登り:5:05
・降り:4:00
となっている。
毎日アルペン号のバスは6:45着の17:00発。
7:00に出発して16:30には戻ってくる想定だと、9:30しかない。
意外と余裕はないのだ。

ただ一方で、地図を見ると単純標高差は1100m程度。
累積標高差でも1300mくらいではなかろうか。
丹沢の塔ノ岳を大倉尾根で上り下りするのと同じかちょいキツイくらい?
そんなに時間がかかるものだろうか?とも感じていた。

結果から言えば確かにやや甘めなコースタイム設定ではあった。
ただ周囲の登山者を見ていると、子供連れや高齢者も多く、大倉尾根よりかは平均的な歩く速度はだいぶゆっくりめであるように感じた。
その山を訪れる人の平均レベルでコースタイムが作られるとすれば、たしかにそんなものかもしれない。

■渋滞について
これが一番の予想外だった。
こんなに人が多いとは思わなかった。
さすが百名山と言うべきか。

頂上御室までは別に人が多かろうが問題ないのだが、新山への岩場で渋滞は嫌だなあ。
まして山頂が空くのを待つだなんて。
小屋の営業期間外の10月上旬でこれならば、シーズン中はいかほどか。
いや、むしろシーズン中に頂上御室で泊って、夕方か早朝に登ればいいのだろうか。

■毎日あるぺん号について
面倒な乗り換えなしで登山口まで直行で運んでくれるありがたい存在。
それにもかかわらず今回まで利用を避けてきたのはバスが4列シートだから。
(上高地や白馬などの一部例外を除く)
私のでかい図体だと、4列シートに収まらない。
日中の数時間、例えば新宿~富士山五合目くらいならば、肩ひじをちじこませて耐えられるが。
寝て体力を回復しないといけない夜行バスでそれはあまりに非人道的よ。
だから避けてきた。
計画の方の記事に書いたが、鳥海山はそうも言ってられない山ゆえに今回利用したが、やっぱり4列シートはツライ。
耐えられない程でもないが。

前提として整理すると、毎日新聞社の関連会社で毎日旅行という旅行会社がある。
その毎日旅行は登山ツアーなども手掛けている。
その登山ツアーの関連で、登山口へのバスのみ、あるいはバス&山小屋予約の「毎日アルペン号」があるという位置付けだ。
だがあくまで旅行代理店であって、自前でバスを運行している訳ではない。
バスの運行そのものはバス会社への委託になる。
上高地と白馬にだけ3列シートがあるのは、たぶんアルピコ交通への委託なのだろう。

今回の鳥海山へのバスはやや小型の車両で、八王子のなんとかという聞いたことのないバス会社だった。
ツアーバス会社かもしれないが、高齢の男性二人の乗務員ながら丁寧な方で不安はなかった。
車両も4列シートながら、席と席とが5cm程度離れているやつで、それでなんとか耐えられた。
席と席がぴったりくっついているやつで隣も平均以上の体格となると、
肘はもとより、肩と腰が常時隣の人とくっつく状態になり、多分耐えられなかっただろう。
バスの車両がどんなタイプになるのか、なんとも分からないな。

座席は4列シートだが、「Wシートオプション」というものがある。
一人で隣り合った2席分を利用できるというもの。
ただこれが安くない。
鳥海山行きだと、通常25000円程度が、Wシートをつけると40000円位になる。
一般の高速路線バスだと同種のオプションは非常に安いのだが……
これはたぶん、一般の高速路線バスは空席がある前提なのに対し、
毎日アルペン号は全席完売が見込める分しかツアーの開催日を設定しないからだろう。

仮に、1席25000円、1列4席で100000円の売り上げとして。
それを3列シートにするなら1席34000円にするのは構わない。
だが利用者目線だと席の小さな座り心地の良くない4列シートで、隣が居ないという保証だけで40000円はちょっと承服しがたい所はある。
運行側からしたら2席で50000円の所を40000円にしてやってるのだろうが。

それから毎日アルペン号はからなず往復セットでの販売になる。
行きは早朝に登山口に着くのがありがたいが、
帰りは必ずしも利用したいとも限らない。
他の交通機関にもよるのだが。
私の山行スタイルだと、山だけではなく、麓の風景や、最寄の街の散策、その土地の料理や酒も味わいたい。
東京の街と、登山口とをワープするようなのはちょっと味気ないというか。
まあ、無駄のない往復セット販売だからこの値段で売れるというのはあるだろうけどね。