2016/11/07月 丹沢大倉尾根(花立まで)
0531 新宿 小田急線急行小田原行
0641 渋沢
0648 渋沢駅北口 神奈中バス大倉行
0703 大倉
大倉バス停 標高290m
花立山荘 標高1300m
(塔ノ岳 標高1490m)
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”都心からもっとも近い百名山”
という謂われは丹沢の特長の一面を的確に表している
小田急線の駅から大倉の登山口まで、平日の日中でも一時間に2本はバスが出ていて、
4km程の道をわずか15分で運んでくれる
マイカー派にとっても駐車場が充分あり、遠方から来て前夜泊したい人にも民宿が多数ある
このアクセスの良さと山頂からの眺めの良さとあって一年中登山者が絶えない
丹沢は神奈川県の1/6を占める巨大な山塊ではあるが、
南側から主脈へ登るならば塔ノ岳がひとまずの目標になる
塔ノ岳へは主に
・ヤビツ峠からの表尾根
・大倉からの大倉尾根
が2大ルートになる
ヤビツ峠までバスで標高を稼いで、アップダウンの激しく鎖場もある華やかな表尾根に対し、
ひたすら階段状の急斜面を登る大倉尾根がややもすると地味なルートとみられる
登山者があまりに多いため、道をガチガチに整備せざるを得ない事情もあるが
ただそれ故に危険箇所のない安全な道である
大雨の時・暗くなった時に予定を変更して大倉尾根で下山する、ということも珍しくない
この大倉尾根、知っている人には説明するまでもないが、ハイカーの間では「馬鹿尾根」という不名誉な通称で知られる
急な階段を延々と登らされる為、悪態の一つもつきたくなるというわけだ
私が初めて登った時は、あまりのキツさに頭がおかしくなりそうだった
だがこれはいささか気の毒な話で、そもそも標高差1200mもあるルートが楽なはずがないのだ
日帰りで標高差1200mというのは結構な部類になる
それがアクセスの良さと道の良さで人をひきつけてしまい、キツさが際立つのではなかろうか
昭文社の山と高原地図では、大倉から塔ノ岳までコースタイムはなんと3時間30分
体力さえあればだが、それだけ早く登れてしまうのは道の良さ故、
キツく感じるのは早く登ってしまって体への負担がもろに出る故、と考える
そんな大倉尾根だが、数年前まで私は頻繁に登っていた
安全でキツイ、が故にトレーニングにはうってつけで、
「大倉尾根を無理なく日帰りできるなら、富士山だってアルプスだって登れる」とも言われる
憧れのアルプスに登るため、あの頃はひたすらここで脚を鍛えていたのだ
だが南・北・八の手頃な峰を幾つか登ってしまうと、しゃにむさが無くなってしまい、
ここにトレーニングにくることも無くなった
(そも、毎朝のジョギングもやめてしまった)
必然的に体力・脚力はおちて、今度は標高差1200mもの山は登れなくなってしまい……
そんなわけで足が遠のいていたのだ
ただこの所、月3くらいのペースでそこそこの山を歩いていて調子がいい
今なら塔ノ岳まで登れるんじゃないか?
そんな気になって、ものは試しで数年ぶりに挑んでみたい
鈍足であっても心はヤマヤ、当然始発バスに乗るべく小田急線の列車をあわせる
というか数年前は頻繁に行っていたので時刻表を見るまでもなく頭に入っている
のだが
朝ミルクティーを淹れて、すすりながらのんびり天気予報やニュースを見ている内に時間が押してしまった
慌てて家を出るが、いつもの店で朝食を食べる時間がない
それどころかコンビニに寄る時間もないぞ?
新宿駅構内でも渋沢駅でも営業している売店は無い
だがあてはある
渋沢駅北口ロータリーに面したオリジン弁当は、丹沢への登山者のために早朝から店をあけて、
おにぎりとからあげを作り置きしてあるのだ
昔はここでいつもからあげを買って、山頂で食べたもんだ
……閉まってた
数年の間に営業時間が変わったか
こうなると仕方ない、大倉バス停前のレストハウスでカロリーメイトや菓子パンでも買うしか無いか
……閉まってた
臨時休業の張り紙が入り口にはってある
ここが休みのときなど今までなかったのだがなあ
どうにも勝手が狂ってしまった
というか
朝食も食べてなければおべんと類を何も持っていない状態で今、登山口に立っている
嘆いても仕方ない
自販機で暖かいカフェオレを買い、のみほしてから出発する
大倉バス停(290m)
トイレもあるし洗い場もある
飲食店も4軒ある
吊橋で戸川を渡った先の山岳スポーツセンターにはシャワーもある
登山口としては恵まれた部類
0710頃出発
しおれかけのアザミ
新しくしたスマホだが、なかなかあなどれない表現力だ
観音茶屋……だった所
はっきりしないが廃業になったと聞く
ここのおかみさんの牛乳プリン(プリンといっても実際は寒天、缶詰のみかんが入っていた)とてもおいしかった
新しい公衆トイレが出来ている
大倉高原山の家
丹沢の稜線上で唯一の水場のある小屋であり、唯一のテン場のある小屋でもある
先月ニュースで見たが、ここを新たな観光資源として再開発しようとする秦野市と、
長年管理を行ってきた男性との間で一悶着起きている
行政が予算を組んで本腰入れてくれるなら、そっちのほうが登山者にとって良いものが出来るに決まってはいるが
山は小屋の人たちのボランティアで成り立っている部分もあるので、心情的にはなんとも
ここの水場だって湧き水ではなく、人の立ち入れないような下の沢からわざわざ引いてきているのだ
3つめ、見晴茶屋
大倉尾根・表尾根には短い間隔でたくさん山小屋があるが、基本的にはみな週末祝日のみの営業
ここのトイレは大倉尾根上でもっともきれいな為、よく使わせてもらっていたのだが
そちらが閉鎖され、公衆トイレが出来ている
ふむ、確かに秦野市のやる気を感じる
見晴茶屋の裏からが本番
急登が始まる
見晴らし茶屋と駒止茶屋の中間、一本松と呼ばれる所
何本も松は生えているので、どれが「その」松なのだか分からぬ
この看板を見て「7km中の3kmきたのか、ほぼ半分だな」などと思うと後で泣きを見る
一本松の少し上の中間ベンチ
これは完全に「俺理論」なのだが、大倉尾根を登る際、コースを等分して考えている
2等分:大倉~堀山の家~塔ノ岳
4等分:大倉~一本松中間ベンチ~堀山の家~花立山荘~塔ノ岳
8等分:大倉~見晴茶屋~一本松中間ベンチ~駒止茶屋~堀山の家~
天神尾根分岐中間ベンチ~花立山荘~金冷し~塔ノ岳
8等分した時、金冷し以外は全て小屋なりベンチなりがあって休憩できる
故に「俺理論」ではこの一本松はまだ1/4なのだ
距離ではなく標高差で考えるべきだよ
ひたすら登るといっても、本当にずっと登りが続くわけではない
急な所と緩やかな所が交互にでてくる
4つめ、駒止茶屋(890m)
ヤビツからくる表尾根は、尾根上が雲につつまれている
腹の虫が鳴き出した
この辺は平坦だからまだどうということは無いが
標高が上がってくると、ボチボチ黄葉も見られる
堀山の家(950m)
トイレが工事中
ここのトイレ、素掘りの穴にポットンで臭かったんだよなあ
ここも週末のみの営業だが
以前は小屋の前にいつもクーラーボックスが置いてあり、中には缶飲料や小袋に詰めたおやつが入っていたのだ
どれも一つ100円、横の箱にお金を入れる
正直ここでおせんべいの類でも買って食べようとあてにしていたのだが、
この通り資材が置かれていて、今は無い
仕方ない、ザックの中で唯一カロリーの取れるポカリスエットを飲んで空腹をごまかす
堀山の家からはまた登りになる
70歳は超えているとおぼしき、ソロのおばあちゃんと落とし物のことで一言二言話をする
歩く速度は私と同じくらいだが、とにかく休まずにあるき続けるのであっという間に離される
道が安全なので高齢者も多い(平日は必然的にそうなる)のだが、
この馬鹿尾根に挑むとあって、皆年齢不相応に恐ろしく達者だ
天神尾根分岐のすぐ上の中間ベンチ
腹減ったなぁ
塔ノ岳まで行けば、尊仏山荘は通年営業しているから食べるものはあるが
そこまで持つのか不安になってくる
ポカリは即効性のエネルギーだが、それ故腹の足しにはならん
花立の階段
かつて登山者が無秩序に歩いたため、広範囲に渡って崩落が進んでしまった
その為今はガチガチに固めて、なんとか脇の植生を回復させようとしている
階段を歩くのが嫌だからと、階段の脇を歩くようなまねはしてはいけない
しかしそうは言ってもこの階段はキツイ
大倉尾根で一番キツイのがこのあたり
この辺のアザミはピンポン玉くらいある
階段の向こうに白い曲がった杭が見える
あそこが花立山荘であり、営業している時はあの杭に赤い幟がはためいて、
キツイ階段にあえぐ登山者を励ますのだ
幸せの赤い幟
花立山荘(1300m)
下から数えて6つめの小屋であり、大倉尾根の最後の小屋
山荘西側
富士山がみえる
鍋割山稜は紅葉が始まっている
営業していればここはいろいろ食事が取れるのだが
トランペットが欲しくてショーウィンドウにへばりつく黒人少年状態
山荘の南側、登ってきた道
秦野の市街よりも先は霞んでしまってよくわからない
晴れていれば相模湾・伊豆大島まで見える
山荘の東側
三ノ塔や大山は雲がかかったまま
ここから塔ノ岳まで標高差200m、1時間弱
この時11時
時間はかかっているが脚はまだ大丈夫、疲労はさほど溜まっていない
けれど空腹が酷く堪えて
階段の登り足で体を持ち上げるのに力がはいらないんだ
ポカリも飲み尽くしてしまって、とても体が持たない
残念だけど今日はここまでにしておこう
富士山を一瞥してから下山
この通り眺めのよい場所なので、ここをゴールにする人も多少はいる
花立からの下りの景色は、大倉尾根を歩いていて一番楽しい
いつの間にか表尾根の雲は晴れていた
腹が鳴って力が抜け、足が止まってしまうこともしばしば
13:25に大倉バス停に戻ってくる
バス停に誰も並んでいないのでそんな気はしたが、ちょうどバスが行った直後だった
以前はどんぐりハウスでカレーライスを食べてから帰るのがお決まりだったのだが、休業では仕方ない
「いつ作ったカレーだよ」と突っ込みたくなるほど、具材が煮崩れてグデグデになって味も濃くなったカレー
街で食べれば野暮ったいの一言なのだが
山から降りてきた状態、汗をかいて塩分を欲していて、疲れていて胃に消化の負担がかからないものが欲しい状態だと、不思議とこのカレーが旨いのだ
またいつか食べたい
代わりに渋沢駅のケンタでチキンを貪り食らう
温泉にはいるつもりで着替えは用意してきたが
さほど汗は書いていないのと、電車がまだ混む時間でも無いのでそのまま帰るとする
しかし山歩きを始めてもう結構経つけれど、食べるものがなくてひもじくて撤退したのは今日が始めてだよ
なんてザマだ